SK‒Ⅱ「売れ残りの女」の動画が感動を呼んだ訳 国の文化を理解し成功したマーケティングとは

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動画では、そのような状況の中、わかり合えない親と娘を取り上げて、最後は娘が自信に満ちあふれたポートレート写真とともに、自分の思いを告げる様子が描かれます。

女性たちが自分らしい生き方を選ぶ姿勢と、自信に満ちた姿は、多くの女性の共感を獲得しました。私も、一般の消費者へのインタビューで「あの動画はまさに私のこと! すぐに自分の親にも見せた。私は今後もSK‒Ⅱを使い続けると思う」と、泣きながら語る女性にお会いしたことがあります。

この動画が素晴らしいのは、結婚や家族に関する伝統的な価値観と、そこで思い悩む人に目をつけた現地への理解度はさることながら、子どもと親がわかり合うシーンを示しているところです。

中国は家族を重んじる文化が非常に強く、若い世代でも「親がわかってくれなくても自分を貫く」というよりは、「自分を貫きたいけど、親にもわかってほしい」という気持ちが強くあります。だからこそ、若い世代の女性たちの悩みは深いものがあるのです。

このプロモーションは、文化や伝統を深く理解し、それにまつわる人々の気持ちにスポットを当てることで、キャンペーンのテーマである「Change Destiny」をうまく中国市場の文脈に当てはめた好例といえるでしょう。

国ごとのライフコースがカギに

消費者理解に欠かせない2つ目の視点「ライフコース」についても、少し触れておきます。

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どこの国でビジネスをする際にも、まずはターゲットとなる消費者のライフコースを眺めて、どのようなマーケティング機会があるのかを見ていきます。

例えば、超学歴社会で学校側の管理が厳しい中国では、日本とは教育への力のかけ方が異なります。子どもには幼少の頃から、習いごとをかけ持ちさせる「知育教育」を始めます。

学校に入ってからは大量の宿題をこなす必要があり、子ども向けのストレス解消グッズが人気になるほどです。

最近は日本でもタブレット教育が始まり、学校で配られるプリントの電子化が進んでいますが、中国では宿題は電子ファイルで配布されることが多くなっています。そのため、都市部の家庭ではプリンターが必須となります。

ほかに中国における各ライフコースには、一例として次のようなものがあります。

書籍より引用

 

このように国ごとにライフコースを見ていくことで、市場の機会や消費者ニーズに関して見えてくることがたくさん存在するのです。

久保山 浩気 balconia shanghai Itd.総経理

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くぼやま こうき / Kouki Kuboyama

IMJ(現アクセンチュア)の事業部長として、日本のデジタルマーケティングに従事。その後、米系ブランディングファームのアカウンティングディレクターとして、米国のブランディング・マーケティングを経験。2015年より上海在住。balconiaには2017年の創業メンバーとして参画し、東京法人の戦略チーム、クリエイティブチームの管掌、および香港・上海法人の代表を務める。

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