「ネットで多くの人が支持するから正しい」の誤解 きちんとした理由がなければ正当とみなせない

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誰が何度投票しているかわからないネットの投票は多数決でさえありません(写真:Greyscale/ PIXTA)
知は、どのようにすれば、着実に身につくのか? 一方、せっかく身に着けたと思ったら、恐ろしい「痴」になってしまう恐怖。「知」ならざる「痴」とは、自分が習ったことが記憶に無くなっているという自覚もなく、さらに自分が知らないことは無い、と思いこむことだ、と『〈知〉の取扱説明書』の著者、仲正昌樹氏は言う。
本書の「第2章 知と痴――ネット時代の学問」より、ネット社会で漂流しないように、きちんと「正しさ」とは何か、を考えてみよう。

支持が多いことと、正しいことは違う

物事の真偽が、「多い・少ない」の問題になってしまうことが多いです。ネットでより多くの人が支持しているから、〝事実〟であるとか、〝正しい〟ということなどないです。人数の多さで決めていいのは、選挙とか住民投票のように、多数決で決めることになっているものだけです。

無論、多数決で決めるときも、ちゃんと手順を踏んで投票するかが重要で、誰が何度投票しているか分からないネットの投票は、多数決でさえありません。ましてや、イイネの数など、意味はありません。

「私のまわりはみんな言ってるから」というときの「まわり」がそもそも疑わしいわけですが。ネットによる情報の共有を通して民主主義が促進されると言うとき、当然ですが、情報についての「熟議」が大事です。それは、人間がどうやって正当な知識を得るかということにも関わります。多数の人が言っていても、きちんとした理由がなければ正当と見なしてはいけない。

「熟議民主主義」とは何かを説明する分かりやすい言い方として、「民主主義を裁判に近づける」というのがあります。判決は、ちゃんと理由を述べないといけません。法律や今までの判例、そして社会常識と整合性があり、論理的一貫性がないといけません。

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