お給料、何やらいろいろ引かれてるんですけど… 明細書をチェックして天引きの中身を知ろう

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「介護保険」は40歳から健康保険と併せて天引きが始まります。介護保険は、要介護度に応じて受けられる介護サービスの利用料の自己負担が原則1割になる保障です。

天引きされている社会保険料のなかでも天引き額の比較的大きいものが、「厚生年金」です。厚生年金の保障といえば老後に受け取る年金のイメージが強いですが、それ以外にも亡くなったとき遺族のために支払われる「遺族年金」や、障害状態になったときに受け取れる「障害年金」があります。厚生年金には国民年金も一緒に含まれて天引きされており、国民年金だけで受けられる保障よりも手厚くなります。

「雇用保険」は、失業した場合に必要な給付を受けられるなど、再就職を援助してくれる制度。失業した場合には「基本手当」(いわゆる「失業保険」)、そこから一定の要件を満たして再就職をした場合には「再就職手当」「就業促進定着手当」を受け取ることができます。「教育訓練給付制度」はキャリアアップにも活用できます。

非正規雇用でも引かれる場合が

こうした社会保険は、非正規雇用であってもフルタイム勤務であれば、原則として加入対象となります。何気なく給与から天引きされている社会保険料にはこういった保障があることを、この機会にぜひ覚えておきましょう。

同時に、これらの保障を加味したうえで民間の保険を検討することが、自分にとって必要な保険を見極めるためには大切です。

◎知らないと損!雇用保険のお得な制度

雇用保険の「教育訓練給付制度」を活用すると、スキルアップのための講座を有利に受けることができ、自分の時間単価向上に役立ちます。

教育訓練給付制度は、資格や学位取得の講座、専門知識の習得や能力向上のための講座を受講した際の費用に対して給付金が支払われます。制度にはレベルなどに応じて3種類あり、それぞれで給付率や上限が異なります。

「専門実践教育訓練」は最大で受講費用の70%・年間上限56万円(最長4年)、「特定一般教育訓練」は受講費用の40%・上限20万円、「一般教育訓練」は受講費用の20%・上限10万円が受講者に給付されます。対象講座によってこの3つのどの制度に該当するか分けられます。

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業務独占資格である介護福祉士、社会福祉士、看護師、美容師、税理士などの資格取得を目指す講座や、英検や簿記、ITパスポートなど資格取得講座があります。大学院・大学・専門学校の課程も制度の対象になる場合があります。ほかにも、対象の講座は約1万4000もの数があり、オンライン、土日・夜間に行われているものもあるため、働きながら受講も可能です。

制度を受けるには雇用保険の加入条件があります。受講後に制度対象外だったと知った場合は給付を受けることができないため、給付を受けられるかどうか、事前にハローワークで支給要件照会の手続きを利用すると安心でしょう。

自分が支払っている雇用保険には支援を受けながらスキルアップを目指せるお得な制度があることを知っておくと、今すぐ利用できなかったとしても転職などのタイミングで使えるかもしれません。自分のキャリアにプラスになるようであれば、積極的に活用していきましょう。

町田 萌 FPサテライト株式会社代表取締役、ファイナンシャルプランナー

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まちた もえ / Moe Machita

日本大学商学部を卒業したのち、税理士法人での勤務を経て24歳でFP事務所を開業。26歳でFPサテライト株式会社を設立。保険や証券などの金融商品を一切取扱わず、30名以上の所属FPとともに消費者にとって中立中正な立場で業務を行っている。20代~30代前半の婚約中・新婚世帯を中心とした相談実績多数。また、これまでに50名以上の女性FPの教育、マネジメントに携わる。2020年度から産業能率大学通信教育課程の兼任教員を務める。2022年現在、一児の母。

保有資格はCFP®、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員一種、簿記2級など。

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