リモートで現実味、脱都会へ移住婚という新風潮 地方自治体が移住を前提にマッチングを支援

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「いかに連携をスムーズにできるかが問われる」とは、前出の後藤さんの見解だ。

「行政はどうしても縦割りの組織ですから、自治体によっては、結婚の窓口と、移住の窓口の連携がうまくいかない、あるいは市町村は積極的でも、その上に位置する都道府県が消極的というケースもあります。そのため、京都府のように全体で取り組むというのは、一つの試金石になると思います」(後藤さん)

また、上記②③で説明した登録には、こんなネックもあるそうだ。

「応募者はマッチングアプリ程度の手順(個人情報は専用フォームで入力、身分証は画像をデータ送信)で登録できると思っています。しかし、必要書類(入会申込書、身分証明書、独身証明書、写真等)は郵送のみの受け付けなどアナログな対応の自治体もある。今年5月の時点ですが、進捗状況を確認するためにデータを取ったところ、全応募者の中でプロフィールが完成したのは全体の約3割程度でした。約7割の応募者が先に進んでいない。これではせっかく関心を示した人も冷めてしまいかねない」(後藤さん)

こうした状況を解消するため、自治体も脱アナログに取り組み始めているという。現在、応募者の数は、すべての自治体を合わせて298人(7月25日時点)だが、専用フォームの導入やLINEを活用した手続きの効率化とサポートが進展。こうした努力が、実を結びつつある。後藤さんが声を弾ませる。

「長野県山ノ内町の担当者から、約3カ月の交際期間を経てご結婚が決まったという、カップル誕生の報告をいただきました。開始から約2年、移住婚としては第一号です」

2年でたった一組と考える人もいるだろう。しかし、移住婚への問い合わせは現在、全国の36都道府県82自治体から寄せられているという。移住婚の成否は、これからなのだ。

令和における新しいお見合いの形

「都会に暮らすことに息苦しさを感じる人も少なくないと思います。そうした方にとって、移住婚が一つの選択肢になればと思っています」(後藤さん)

婚活における結婚は、文字通り“ゴール”を意味する。だが、長い人生を考えたとき、結婚は決してゴールではないはずだ。どんな場所で、どんな暮らしを実現したいか――。移住婚は、ライフプランを考える“新しいお見合い”として、令和の時代に定着する可能性を秘めている。

我妻 弘崇 フリーライター

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あづま ひろたか / Hirotaka Aduma

1980年北海道帯広市生まれ。東京都目黒区で育つ。日本大学文理学部国文学科在学中に、東京NSC5期生として芸人活動を開始する。2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経てフリーライターとなる。現在は、雑誌・WEB媒体等で幅広い執筆活動を展開している。著書に『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー ビジネス力を鍛える弾丸海外旅行のすすめ』(ともに星海社)など。

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