東証と大証が統合協議の方向も、市場活性化・売買拡大には冷めた見方
東京証券取引所と大阪証券取引所が統合に向けて交渉を開始することが明らかになった。東証の斉藤惇社長は10日午後、記者団の質問に対し、「(大証側とは)まだ何も話をしていないが、(統合に向けた)流れそのものに否定的ではない」と語り、今後、大証の米田道生社長と直接会って話し合う意向を示した。大証の米田社長も一部記者団に「3カ月以内に基本合意まで行きたい」と述べたとされ、今月から統合に向けた協議が本格化しそうだ。
ただ、東証の斉藤社長は統合よりも「まず上場が先」と強調しており、上場審査などの手続きを考えれば、上場は早くても今年秋、統合するにしても実現は来年以降になりそうだ。
大証との統合メリットについて斉藤社長は、現先(現物と先物)一体化による「経営の安定性」を挙げる。東証は国内の現物株市場の約9割を独占、大証は派生商品(デリバティブ)で約5割のシェアを持つ。東証が強みを持つ現物市場には、産業資本を提供するという大きな役割がある反面、上場や取引管理のコストなどがかさみ、収益性が低い。一方、大証が上場している日経225先物、オプションといった派生商品は比較的収益性が高いが、企業のファイナンスニーズに応えられるわけではない。
この2つの市場が合体すれば、「機能としてバランスがとれる」(斉藤社長)ことになる。統合によって、システム開発コストなどの節約効果もありそうだ。
先月合意されたNYSEユーロネクスト(傘下にニューヨーク証券取引所)とドイツ取引所(フランクフルト証券取引所などを運営)の年内合併も、現物に強みを持つNYSEと派生商品が得意なドイツ取引所との組み合わせ。昨年秋合意のシンガポール証券取引所によるオーストラリア証券取引所の買収も基本的に現先一体化の流れに沿った再編劇。そうして市場のシェアと収益性を高めることによって、台頭する電子取引所の攻勢にも対抗していこうという動きだ。
また、投資家に対するメリットとして斉藤社長は「透明性と公平性」の向上を挙げる。取引所は経済のインフラであり、流動性を高め、公平な値段が実現することによって投資家の利便性が上がると強調した。現先一体化によって、先物などによる現物のヘッジでも利便性が向上する可能性もある。