東証と大証が統合協議の方向も、市場活性化・売買拡大には冷めた見方
経営基盤強化という点では大証も同じ必要性があった。米田社長はこれまで、国内市場間の競争重視という観点から国内取引所の一本化にやや消極的な姿勢も示してきたが、上場企業(大証は2004年に株式上場)として企業価値を高めるための選択肢を模索せざるを得ない立場にあった。その意味で、両社の思惑が一致したと考えられる。当然ながら、相次ぐグローバルな市場再編のニュースが背中を押したことも間違いないだろう。
今後、統合するに当たって問題となるのは、その方法であり、統合比率の算定だろう。交渉を円滑にするためにも、未公開企業の東証がまず上場し、自らの時価総額を明らかにする必要がある。東証は09年3月期、10年3月期に連続して最終赤字を計上している。しかも、前期の赤字の原因となったみずほ証券との誤発注を巡る係争では、互いに控訴したまま決着が着いていない。その行方も含め、上場の時期が流動的なのは否めない。
大証が、未公開会社の東証を買収するといったオプションも考えられないこともない。その場合には、東証の株主である旧会員証券会社がどういう判断を示すかが問題となる。買収される側の東証が、統合後の経営主導権で不利になるとのイメージから、交渉がうまくいかない可能性がある。
野村総合研究所の大崎貞和・主席研究員は、「現物取引に強い東証とデリバティブと新興市場を強みとする大証という組み合わせは、相互の機能の補完という意味でも優れている」と評価する。ただ、両社が統合した場合、日本の株式市場、デリバティブ市場で圧倒的なシェアを占めることになる点について、市場間競争の圧力が減退し、「一時的にせよ、経営規律の緩みが生じるという懸念は否定できない」としている。
また、市場関係者の間では、「市場の規模拡大という世界的なトレンドに乗っており、歓迎する」との見方がある一方で、「これで日本全体の株式売買高が増えるとは思えない。投資家の流れは圧倒的にアジアに向いている」との指摘もある。