民主主義は「物語への過剰な愛情」と共存できるか 「ストーリー」のあふれる世界と権威主義の勝利

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「筋の通った意味」を見出すのが物語の目的である以上、物語と事実認識には根本的な違いがあります(写真:builderB/PIXTA)
陰謀論、フェイク・ニュースなど、SNSのような新しいテクノロジーが「ストーリー」を拡散させ、事実と作り話を区別することが困難になりつつある現代。このたび、上梓された『ストーリーが世界を滅ぼす──物語があなたの脳を操作する』で、著者のジョナサン・ゴットシャル氏は、人間にとって大切な財産である「ストーリー」が最大の脅威でもあるのはなぜなのか、を明らかにしている。同書を評論家・作家の佐藤健志氏が読み解く。

時代や社会は神話で動く

「時代や社会は、政治や経済に関するさまざまな理念や主張によって動くように見える。だが、それらの理念や主張の根底には〈世の中はこうあるべきだ〉という共有された物語、つまり神話がひそんでいる。言い換えれば、時代や社会を真に動かすのは神話なのだ」

『ストーリーが世界を滅ぼす──物語があなたの脳を操作する』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

 

これは私が2021年に制作したオンライン講座『自滅的改革が支持されるメカニズム 日本人を惑わす「贖罪と統合」の罠』(経営科学出版)の基盤をなすコンセプトです。

では、なぜ「物語」がそこまで重要なのか?

 

われわれ人間は、自分自身の人生にも、また自分を取り巻く世界にも、「意味」を求めずにはいられないのです。

理不尽や不条理がまかり通るようでは、何を信じ、どう行動すればいいのか、分からなくなってしまうではありませんか。

とはいえ、現実世界はしばしば理不尽で不条理。

 

かくして人間は、「物事には筋の通った意味がある(ないし、意味がなくてはならない)」という視点のもと、現実世界を解釈し、再構成することを学びました。

物語とは、くだんの解釈や再構成の産物にほかなりません。

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