年齢が高い男性ほど自己肯定感が低い納得の訳 一方で自己に対する評価が高いのは中高年女性

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「自分に対する周囲の評価はどうなのか?」

「社会の中で自分はどんな位置にいるのか?」

他人の目線や評価が、そのまま自分の評価になってしまう。つねに他人と比較することで、自分の価値や位置付けを測るようになります。そのことに疑問を持たず、ただただ他人の賞賛と評価を得たいがために競争に身をゆだねるのです。

もちろん、社会的な評価に添うように努力し、成果を上げることは大事なことです。人間は社会的な動物ですから、社会の中での評価は重要なことに変わりありません。実際、学歴や肩書、収入は自分の価値であり、自信やモチベーションの源になっている事実は否めません。

ただし、その「自信」は社会的な評価が揺らいだり、なくなったりしてしまうと、あっという間に崩れ去る危険があります。さらに、社会的な評価や基準に自分を合わせているうちに、本当に自分がやりたいことは何か、自分にとって何が一番大切かということを見失ってしまう可能性があります。前述した定年後の男性の悲劇などは、まさにその典型でしょう。

「他律性」の自己肯定感はもろい

以上から、私は自己肯定感の中にも、「社会評価に基づいた自己肯定感」と、「自分の内的な基準に基づいた自己肯定感」の2つがあると考えます。前者を「他律性自己肯定感」と呼び、後者を「自律性自己肯定感」と呼んで、この2つを区別したいと考えます。

現代社会は、社会的な基準と評価が優先しがちな社会です。放っておくと、どうしてもそちらに引っ張られ、「他律性」が優勢になる傾向があります。

注意しなければならないのは、他律性の自己肯定感は非常に不安定なことです。

社会的な評価や基準は、時代が変わり環境が変わればコロコロと変わります。私たちは意識的にも、無意識的にも、その心もとなさを感じているのです。それゆえ、他律性自己肯定感には、つねにある種の不安がつきまといます。

「自己愛型パーソナリティ障害」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これは自己愛が肥大化することにより、社会生活や人間関係に支障をきたす障害を指します。自己愛が強いので、一見すると自分が好きで自信満々に見えますが、無意識の中では自分を否定しています。なぜなら、それが正確な自己認知から生まれたものではないからです。

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本来の自信のない自分から目をそらすべく、必死で自分を優れた存在とか、きれいで美しい存在だと思い込もうとするのです。思い込みによって作られた自己肯定感を保つため、自己愛型パーソナリティ障害の人は、他人からの絶え間ない賞賛が必要不可欠になります。

「素晴らしいね」「優秀だね」と、つねにほめられていないとダメなのです。そして、それを脅かす人や言動に対して、異常と思えるほどの攻撃性を示すといいます。

いま、自己愛型パーソナリティ障害の人が増えています。それは、社会全体が他者認知優勢になっていることと、大いに関係していると考えます。同時に、このような社会は「自律性自己肯定感」を作りにくい社会だともいえるのです。

加藤 俊徳 医学博士/「脳の学校」代表

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かとう としのり / Toshinori Katou

脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI 脳画像診断の専門家。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科で脳画像研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI 脳画像診断法を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。得意な脳番地・不得意な脳番地を診断し、脳の使い方の処方を行う。著書に、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『一生頭がよくなり続けるもっとすごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1日1文読むだけで記憶力が上がる!おとなの音読』(きずな出版)など多数。

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