地方のパン屋と消費者を結ぶ「パンスク」の正体 小麦粉をちゃんと使った「糖質15g以下のパン」
サービス開始当初はファミリー層の需要を見込んでいたが、実際は40〜50代の女性が多い。届いたメッセージには「家族に内緒で、自分へのごほうびとして食べている」というものもあった。
スイーツなど、「ごほうび」へのニーズは一人暮らしの人にももちろんある。一方で、家庭を持つ女性は食事の好みなどでは子どもや夫を優先しがちだ。1人になれる貴重な時間を、パンやおやつでさらに幸せなものにしたいという気持ちがあるのではないだろうか。
では、パンスクを利用するベーカリー側にとってのメリットはどこにあるのだろうか。
熊本県のベーカリー「プチミニョン」に話を聞いた。看板商品はフランボワーズジュレやチョコレートなどを練り込んだカラフルなクロワッサン。今回質問に答えてくれたのは夫婦で店を経営している東亜由美さんだ。夫がシェフとしてパンを焼いている。
同店は2017年9月に開業。ファミリー層が多い郊外の住宅地で学校も多く、主婦や学生、近くに産婦人科があることから妊婦なども来店する。客数は平均して日に50組ほどだ。
「こだわりをもって作ったものをパンが好きな人に届けたい一方で、個人店としてのスタイルも崩したくないという思いがありました。それで、店舗を広げずに経営を成長させるには、とあれこれ考えていたんです。2017年末からネットショップ開設サービスを活用して通販をしてみましたが、売れ行きにはばらつきがあるし、販売数も増やせないし、個別対応が大変でした。集客もインスタグラムだよりで難しさを感じていました」(東さん)
コロナ禍で製造予測ができなくなった
パンスクとの提携は2022年の4月から。直接の動機となったのが、コロナの影響だったそうだ。
コロナ以前は店が混む曜日が把握できていたが、コロナ禍になると混雑している時間を避けるようになり、製造予測ができなくなったそうだ。またコロナが落ち着いた頃から原料高騰があり、値上げはしていないにもかかわらず「パンが高くなっている」というイメージがあるのか、来店を抑えている感じがしているという。
「パンスクでは製造個数が事前に確定するので予定も立てやすく、ロスも出ないのが助かっています。パンスクにまつわる作業は難しくなく、決まった手順でできるので負担がありません。また製造前の出荷箱数の確定と同時に売り上げも確定するので、メンタル面で本当に助かります。それに自分で通販をやってみて、認知を広めることの難しさがよくわかりました。ですから、パンスクを通じてパン好きの方に知ってもらえることにメリットを感じています。メッセージだけでなく、お店に手紙をくださったお客様もいて本当にうれしかったです」(東さん)
同店では将来的に売り上げのうち2〜3割をパンスクにできればと考えており、店全体の売り上げとしては現在の1.3倍にすることが目標だそうだ。
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