地方のパン屋と消費者を結ぶ「パンスク」の正体 小麦粉をちゃんと使った「糖質15g以下のパン」

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同サービスの特徴の1つがパンの冷凍技術だ。冷凍状態で届いたパンを自然解凍しトースターなどで温めるのがおすすめの食べ方。これにより焼きたてのような味を楽しむことができるという。冷凍でも味が落ちない理由は、冷凍のタイミングと包装材にある。焼き上がったばかりのパンを独自開発の袋に詰めて冷凍することで、でんぷんの劣化を抑えやわらかい状態を保つのだという。冷凍庫で約1カ月間品質を維持できるそうだ。

封を開けずに袋のまま常温で2〜3時間自然解凍する。予熱したトースターで3〜5分焼き、さらに余熱で2分温めるのがもっともおいしい食べ方だという。急ぐ場合は電子レンジで40秒ほど加熱後、トースターで2〜3分焼いてもよい(筆者撮影)

コロナ禍では通販の市場が全般的に拡大したが、食品業界では「冷凍」に対する消費者のイメージが変わったことがトリガーとなり、冷凍食品の市場が伸びた。つまりパンでいえば「冷凍パンはおいしい」ことが広く認知されたのだ。

そのためパンスクについても、2020年2月サービススタート当初から登録が右肩上がりで伸び、現在の会員数は約2万人になるという。同社代表取締役の矢野健太氏は「巣ごもり需要に加え、日頃からベーカリー巡りをしたりパンフェスに行っているような層の利用があったのでは」と分析する。

どの地域に会員が多い、といった地域差はとくになく、人口分布に応じたバランスになっているとのことだ。

また冷凍技術と並んで、パンスクを特徴づけているのがDXの活用だ。ベーカリーに入り込んで働き方を研究したうえで、商品情報管理や出荷管理といった作業をスマホ1つで行えるシステムを独自開発。ポイントはベーカリーの作業負担を抑えたことと、消費者からメッセージが届く機能を備えたことだ。

「地域のベーカリーの課題解決」が目的

今はサブスクサービスもさまざまな種類があり、通販も珍しくない。パンスクではどのように差別化しているのだろうか。

一つには、主役であるパンのおいしさ、多様さがある。ベーカリーは同社社員が試食をして選定しており、現在提携店舗は75店舗に上る。「おいしい」「また食べたい」「人に勧めたい」などが基準となるが、そのほか個人ベーカリーであることが条件だそうだ。矢野氏がサービスを開始した理由の1つが「地域のベーカリーの課題解決」ということなので、チェーン店を対象としないのは当然だ。

また、できるだけさまざまな個性を持ったパンを集める意味もある。

月に1回、8個前後のパンが詰め合わされたボックスが届く(筆者撮影)

パンスクの特徴の1つが、詰め合わせるパンを消費者は選べないこと。ふだん選ばないようなパンとの出合いや、パン屋でパンを選んでいるようなワクワクする楽しさに価値を置いているためだという。

「地域地域にいろいろなパン屋があることは、社会の多様性にも通じると思います。パンスクのお客様にも世界の広さをいっしょに感じてほしいという意味で、あえて種類を選べないようにしています」と矢野氏。

ただし甘さ、しょっぱさの好みや食パンを入れるかどうかなど、ある程度の選択肢を設けてほしいという声もあり、対応を模索中だそうだ。

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