ごく普通の「幼児教育」が日本財政に与える好影響 家族の経済学に詳しい山口慎太郎氏に聞いた

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家族に関する経済学を研究する山口慎太郎氏は、子どもの数を増やすだけでなく「質的な向上」を図ることも重要だと語る。

山口教授は、幼児教育の高い費用対効果を指摘する(撮影:梅谷秀司)

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長年、低出生率に悩んできた日本だが、子育て支援政策にかける予算はフランスや北欧といった欧州主要国と比べると低い。
子育て支援の費用対効果を考えたとき、とくに高い効果を期待できる政策の形とは。
家族に関する経済学を専門とする、東京大学大学院の山口慎太郎教授に聞いた。

予算を増やして上がる出生率は意外と小さい

──日本が子育て支援政策にかける家族関連支出は1.7%程度で、GDP(国内総生産)比でフランスや北欧諸国より少ないのが現状です。なぜでしょう。

もっとも大きいのは、家族に対する国の考え方の違いだ。フランスや北欧では、子育ては社会全体でやるものだ、という思想がある。それに対して日本やその他の東アジアの国々は、家族のことは家族の中で解決しなさい、という姿勢が基本。それどころか「行政が家庭内に踏み込みすぎるのはよくない」という価値観が根底にある。

――少子化対策という側面で考えた際、子育て支援の予算をどのくらい増やせば出生率が上がるのでしょうか。

予算を増やせば、間違いなく出生率にプラスの効果はある。

問題はそれが量的に十分と感じられるかだ。増やした予算に対して、上昇する出生率は意外と小さいのが現状。出生から成人までに子どもにかかる全支出を1%減らす支援をしても、上がる出生率は0.05程度だ。

ハンガリーのオルバン政権はGDP比4.7%と巨額の予算を投じ、少子化対策を行った。それでも、1.3だった出生率が1.6に上がった程度だった。

日本が今から予算を多少増やしたとしても、(人口を維持できる出生率である)2.1を超えるような、劇的な改善はとても見込めない。

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