米国が懸念する「安倍氏亡き後の日本」の凋落 安倍氏の海外での評価の高さが日本の重荷に?

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岸田文雄首相がこれで安倍氏の影響力から抜け出せるのかどうかも、アメリカの識者らにとって、同様に不確かだ。ここ数カ月、安倍氏は岸田首相への批判をますます強めており、日本は台湾有事に介入する準備をさらに整え、核兵器の議論を行うべきだと、公然と求めていた。岸田首相はいくぶん抵抗し、ウクライナ戦争などの世界的な問題では、一時的にリーダーシップを発揮することもあった。

「しかし、岸田首相自身は、本当は何を考えているのだろうか」と、何十年にもわたる日本政治分析の第一人者であるカーティス氏は問う。「これは岸田首相が前に出るチャンスだが、彼に本物のリーダーの資質があるかどうかははっきりしない」。

経済分野が岸田政権の最大の課題に

岸田首相の「新しい資本主義」の話は、ほとんど中身がないと思われている。自民党は参議院で圧勝したが、岸田首相は、政治的手腕の分野ではなく、経済で最も困難な課題に直面することになるだろうと、スミス氏は論じる。

エネルギー価格が高騰し、インフレが進み、賃金が伸び悩む中、「岸田首相は日本の家計が所得増を実感できるようにする方法を見つけなければならなくなる」と、スミス氏は予想する。「戦略的問題について語りたいとは言っても、結局は経済に回帰することになる」。

「今は、何らかの変化を生み出せる瞬間だ」と、サミュエルズ氏は言う。「問題は何を変えるか、だ」。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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