米国が懸念する「安倍氏亡き後の日本」の凋落 安倍氏の海外での評価の高さが日本の重荷に?

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「ビジョンを持ち、それを実行に移す方法を知り、国内政治と関わりながら、それを実現した人物だった」と、日本の外交・安保政策の専門家として著名なマサチューセッツ工科大学のリチャード・サミュエルズ氏は話す。「安倍氏はアジアにおける日本の新しい地図を残した。そこでは、日本が世界の中で果たす役割はより確かなものになっている」。

安倍氏は経済再生を声高に訴えて2期目を勝ち取ったが、この分野においては、外部から見ると非常に低い成果しか上げていない。安倍氏が成功を収めたのは、日本が再び成長し、世界経済で役割を果たすことができるという自信を回復させたことである。

もっとも、その功績の大部分は、日銀の金融緩和政策と財政支出に帰せられるべきである。アベノミクスの「3本目の矢」として名高い構造改革の公約は決して実現されなかったという点で、アメリカのアナリストたちはおおむね合意している。

経済政策は最大の関心事ではなかった

安倍氏が本当に関心を寄せていたのは経済問題ではなかったと、アメリカを代表する日本政治の研究者である、コロンビア大学のジェラルド・カーティス氏は言う。

「私は何度も、何度も彼と会っている」と同氏は東洋経済に語った。「彼が本当に関心を持っていたのは、日本が世界という舞台でより大きな役を演じること、そして彼自身もそこに参加するということだった」

アメリカの一部のグループでは、安倍氏はアメリカも採用した反中国政策の立案者として、あるいは表面的にアメリカの忠実な同盟者として描かれてきた。

「安倍氏はアメリカやほかの世界の指導者たちが中国政府との関係において、戦略的対話を基本とする手法に固執していた時に、日本の外交政策を、中国との長期的な競争に集中するべく転換させた」と、ワシントンポストのコメンテーター、ジョッシュ・ロギン氏は書いている。

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