東武鬼怒川線、「ほぼ毎日走るSL」が秘める可能性 沿線住民が花を植え、列車に手を振ってくれる

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そんな小佐越駅、電車で中学校や小学校に通う子どもたちの利用がある駅の1つだとか。朝は保護者が見守りに来て、学校帰りには先生が駅までやってくる。人数は少ないというが、そんな牧歌的な光景が、温泉地のにぎわいのすぐ近くで繰り広げられているのだ。

「観光の名所はだいたい北側に集中していますからね。だから、南のほうをいかに元気にしていくか。SLやリバティに乗っていただいたお客さまに、少しでも興味を持って降りていただけるような駅づくりをしていきたいなと思っているんです」(廣長駅長)

東武矢板線との分岐駅だった新高徳駅をリバティが通過(撮影:鼠入昌史)

その言葉通り、たとえばかつて矢板線というローカル線が分岐していた新高徳駅は遊び心が詰まっている。1つは、駅舎が下今市駅などと同じくレトロ風情の黒塗りスタイルであるということだ。

「ほかにも駅の脇に古いホーロー看板や自動車を置きまして、『三丁目の夕日』に出てくるような世界観といいますか。レトロな雰囲気を味わってほしいなと思ってそうしています」(廣長駅長)

「あとはあじさい。地域の方々に余っているあじさいはありませんか?とお願いしまして、それを沿線に植えて少しでも目に鮮やかにできたらということでやっています。降りていただくきっかけにするために、なにか見てもらえるものを増やしているんです。大桑駅や大谷向駅でも、花を見て楽しんでもらおうという取り組みはやっています」(田沼駅長)

冬はイルミネーション

そうした取り組みは広がっていて、たとえば鬼怒川線の大半の駅で行っているイルミネーションもその1つ。新高徳駅には自宅をイルミネーションで彩っていた地元の方から設備を寄贈してもらい、冬には駅舎まるごとをきらめかせているそうだ。

さらに駅だけではなく、車窓から見える沿線にも力を入れている。大谷向―大桑間の線路脇には倉ヶ崎SL花畑というちょっとした施設がある。もともとは巨大な石がゴロゴロしているような荒れ地だったが、土をならして花を植え、季節ごとのさまざまな花とSLのセットを楽しめるようにしているのだとか。

「地元の人たちと一緒に作った感じで、管理は地元のボランティアの方々がやってくれています。春は菜の花、初夏にはソバ、夏はひまわり、秋はコスモス。冬になったらイルミネーションです。敷地の中に小さな山も作って上から見下ろせるようにしたり、小川を作ってホタルが暮らせるようにしたり。ぜんぶ、私たちだけではなくて、地元のみなさんと一緒にやっているんです」(田沼駅長)

廣長駅長と田沼駅長が強調するのは、「地元の人たちの力」。これは、SLの運行が始まったことをきっかけに広がったものだという。

「SLをはじめるにあたって、沿線にお住まいの方々のお宅を一つひとつ回って説明させていただいたんですね。その中で私たちと地元の方々に関係性ができて、それが絆につながって、交流を深めていって、沿線を元気にできる取り組みを一緒にできるようになりました」(田沼駅長)

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