米紙が伝えた「銃のない日本」で起きた暗殺の衝撃 2017年以降の銃暴力による死亡者はわずか14人

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政治的なイベントにおける警察の警護は手薄であり、選挙期間中は有権者が国のトップリーダーたちと交流する機会がたくさんある。動画には、8日の銃撃犯と思われる人物が前首相の近くを妨害されることなく歩き、手製の銃を発砲する様子が映っていた。

日本の地元警察は、銃撃に使われた手製の銃は長さ約40センチ、高さ約20センチであると発表した。また、容疑者の自宅を捜索したところ、数丁の手製の銃を押収したという。

銃の権利が常に議論の対象となっているアメリカとは異なり、日本の政界で銃器が議論されることはほとんどない。大量殺人は、まれに発生するものの、通常は銃が使われることはない。その代わり、犯人は放火や刺殺という手段をとる。

日本人には銃事件が理解できない

ここ数週間、日本のメディアは不信感と混乱をまじえてアメリカでの銃乱射事件の多発を見てきた。テキサス州ユバルディの小学校で起きた乱射事件の後、日本で2番目に発行部数の多い朝日新聞は、アメリカを「銃社会」と呼ぶ社説を掲載し、さらに別の悲劇によって教室が「銃乱射地帯」と化したと報じた。

日本で有名な週刊誌であり、ウェブサイトも展開とする東洋経済は昨年1月6日の国会議事堂襲撃事件の後に『日本人には理解できない米議事堂襲撃の裏側、なぜ米国の「銃所有」は譲れない権利なのか?』という記事を掲載した。

ジャーナリストの津山恵子氏はその記事の中で、「日本人には、アメリカでこんなに犠牲者がいても、なぜ銃の所持を維持しているのか、理解しかねる」と述べている。

警察官は銃器を携帯しているものの、ほとんどの日本人は日常生活で銃に遭遇することがない。そして、安倍元首相の銃撃事件が起こるまで、日本では銃乱射事件による感情的・政治的余波(アメリカではおなじみの儀式となっていることである)をほとんど経験したことがなかった。

警察庁の発表によると、2021年に日本で起きた発砲事件のうち、死傷者や物的損害をもたらしたものは10件だった。そのうち1人が死亡し、4人が負傷した。この数字には事故や自殺は含まれていない。

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