岸田首相はアベノミクスを本当に継承するのか 日本株は参議院選挙後も上昇を続けられるのか
安倍晋三元首相が7月8日、奈良市の近鉄・大和西大寺駅北口付近で選挙演説中に撃たれて死去した。
同日の東京株式市場では前場、約1兆円とも言われるETF(上場投資信託)の分配金を捻出するための換金売りへの警戒感が和らぎ、一時は日経平均株価が前日比391円高の2万6881円まで上昇。2万7000円回復をうかがう勢いだった。
だが、昼休みに「安倍元首相、心肺停止」という衝撃の一報が伝わると、1ドル=136円台で推移していた為替は一時135円台半ばまで円高が進み、株式市場も急速に上げ幅を縮めた。結局、日経平均は終値では前日比わずか26円高の2万6517円で取引を終えた。
短期では8日後場中に影響を織りこむ
元首相とはいえ、2013年以降、実質的な円安政策ともいえる「アベノミクス」を主導してきた人物が銃撃を受けたことで、海外投資家の動向が注目された。だが最終的には、市場への影響はさほどではなく、上記のように後場終了までには織りこまれたようだ。
日本時間の同日21時30分に発表されたアメリカの6月雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比37.2万人増、失業率も3.6%と堅調な数字を確認。為替がその直後に1ドル=136円台半ばまでにドル高が進んだことでも、金融市場において銃撃事件の織り込みが完了したことは明らかだ。
だが、参議院選挙後の2022年後半以降を見渡すと、まだ市場に影響を及ぼす可能性が残る。
安倍元首相の死は、7月10日に投開票を控える参院選において、自民党・公明党の与党側にとって「弔い」の意味が加わる。日本でも物価が上昇傾向にあり、庶民の不満が徐々に高まっている中で、そうした空気を短期的に封印するには十分な材料だ。
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