健康診断でなぜ残る「欧米がとっくにやめた検査」 いまだに「肺結核」を調べる必要はあるのか?

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例えば、日本で行われている胸部X線検査のイメージは、「肺の病気の有無がわかるのだろう」「肺がんの早期発見ができるのだろう」などという漠然としたものかもしれません。

検査には、正しい理解がないと、なんとなく「万能感」が生まれやすいものですが、実際に検査を受けるうえでは、その検査が持つメリットもさることながら、その限界や「副作用」についても正しく理解しておく必要があります。

胸部X線検査が実施される意義

この胸部X線検査が実施される意義を理解するうえで、少し歴史を知っておきましょう。健康診断における胸部X線は、1972年の労働安全衛生法がその根拠になっています。1972年当初、日本では労働者の中で肺結核が問題となっていました。そう、胸部X線は、肺結核の早期発見の目的で始められたものなのです。肺がんの早期発見が目的だと思われていた方がいたとしたら、そもそもその目的が違ったことになります。

確かに1972年当初、肺結核の罹患率は現在の10倍を超えていて、また労働者の中で蔓延していたことからも、労働者に対して一律胸部X線で検査を行う意義は高かったかもしれません。しかし、罹患率が10分の1以下になった今、同じ検査が本当に有効と言っていいのかには疑問が残ります。

「いやいや、胸部X線で肺がんの早期発見ができるだろう」と思われる方もいるかもしれません。確かに、胸部X線をきっかけに肺がんの早期発見につながる人がいるのは間違いのない事実だと思います。

しかし、肺がんのスクリーニングとしての胸部X線についてはこれまで少なくとも6つの大規模ランダム化比較試験でその有用性が否定されており(Cancer 2000)、アメリカや欧州諸国では、肺がんのスクリーニング検査として胸部X線検査は推奨できない、としています。かわりに、特定の年齢のリスクのある人に低線量肺CT検査を行うことが推奨されているのです。

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