日本はイスラームの「性差別」を責められるか

案外多い「共通点」とは

そもそも一夫多妻制というのは、なぜ成立するのでしょうか? イスラームの社会だけでなく、日本でも戦前まで、男性が妾を持つことは法律上認められていました。

旧刑法の姦通罪は、夫のいる女性がほかの男性と関係を持った場合に、その相手の男性とともに、適用されるものでした。逆に言うと妻のいる夫が、夫のいない女性と関係を持つことは姦通罪の対象にならず、したがって妾を持つことは事実上合法とされたわけです。

では、なぜそうした状況が成立するのか。一夫多妻制という明らかに性差別的な制度は、なぜ成り立つのでしょうか? 理屈は比較的単純です。

1.男性間に大きな階層間格差がある

2.女性が自立して生きていくことが難しい

この2つの条件を満たす社会では(法がそれを容認するかどうかとは別に)、必ず一夫多妻制が成立してしまいます。

豊かな男性の第二夫人になるほうが、貧しい男性の唯一の妻となるよりもはるかによい生活ができる、という条件が満たされてしまうと、女性の側にとって第二夫人を選ぶことが「合理的」になるのです。

人口の半分がみんな反対している制度というのは、なかなか維持できません。上記のような条件をおけば、女性の側から見ても「合理的」になるからこそ、一夫多妻が成立してしまうのです。当然ですが、力学を説明しているだけで、それがよいことだと言いたいのではありません。

クルアーンの正典が成立した7世紀ごろには、中東でも日本でも上流層では、一夫一婦制という考えが主流ではありませんでしたから、そうした記述があることは特に驚くことではありません。

イスラームというと一夫多妻というイメージを持つ人がいますが、日本の武家や天皇家でも一夫多妻はよくあったわけで、イスラームの専売特許ではありません。今の日本でも、愛人を持つ人はいるでしょう。イスラームの一部の一夫多妻制を認める社会と違うとすれば、それが社会的・法的にどのような効力や正統性を持つかだけです。

ヴェール着用義務は性差別か?

次に、ヴェールの問題。体の線を見せず、頭にかぶるスカーフの総称で、チャードル、ブルカ、ヒジャーブなど社会によって呼称が異なります。もともとは上流階級の女性の、いわばステータスシンボルであったものが、おそらくはそのことゆえに、多くのイスラーム女性のスタンダードな服装となっていきました。社会によって、髪の毛だけを隠すのか、目以外をすべて隠すのかなどといった違いも存在します。

なぜ髪の毛を隠さなければいけないのかと、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。それは髪の毛が体の線と同様に、性的な誘惑をはらむものだと考えられるからです。髪の毛が隠されていない日本社会では、不思議に思えるかもしれませんが、もし女性の髪が性的な意味づけを持たないのなら、日本のドラッグストアのヘアケア商品の大半は不要です。また以前の連載でパンチラについて論じたように、隠すことが必ず欲望を作り出します。

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