日本はイスラームの「性差別」を責められるか

案外多い「共通点」とは

これを「性差別」と言えるかというのは、なかなか難しい問題です。男性のひげとセットになっており、それが女性・男性にそれぞれ義務とされるという意味では、「性別からの自由」を欠いていることとなり、問題だと言えるでしょう。

ただ、それが民族的アイデンティティだとなると、議論が複雑になります。完全な政教分離(世俗主義)を取るフランスでは、2004年にスカーフで髪を隠して学校に通いたいというイスラームの女子生徒の主張を法律で退けました。

2011年施行のいわゆる「ブルカ禁止法」では、公共の場でのブルカ(ヴェール)の使用が禁止されています。ここでイスラームのアイデンティティと「性別からの自由」が衝突することになります。テロが許されないのは当然ですが、シャルリエブド事件の背景にこうした問題があることも、また自明です。

ちなみに東京大学にも、マレーシアやインドネシアから来たスカーフ姿の女子学生はたくさんおり、学生食堂のメニューにも、イスラームの人たち向けに豚肉を用いない「ハラール」のマークがつけられています。

日本の中学や高校で、女子学生がスカートしか認められない、もしくは男子学生のスカートが認められないというのも、「性別からの自由」に反すると議論することは可能です。「男にスカートなんて荒唐無稽」と思うかもしれませんが、これは性別違和(性同一性障害)を持つ生徒さんたちが、真っ先につまずくポイントです。

休みの日の服装にまで干渉するという意味では、ヴェールのほうが包括的で、より「深刻」だと言うことができますが、性別が特定の服装を要求するという現象は、さまざまな文化で共通して見られるもので、イスラームに限らない大きな問題だということになります。

東大の女子学生比率だって、たったの19%

最後に就学の問題です。女性が学校に行くことさえ許されない。これに立ち向かったマララ・ユサフザイさんがノーベル平和賞を受賞したのは、みなさんよくご存じのとおりです。ですが、女性が学校にすら行けない社会というのは、イスラームの中でもかなり珍しく、決して多数派ではありません

そもそも農業社会にあっては、子どもは消費財ではなく生産財です。学校に行く存在である以前に「小さな大人」として働くことが期待されており、労働力として価値があるために、人は多くの子どもを持とうとします。これはイスラームの社会に限らず、普遍的に見られた現象で、世界中の発展途上国で初等教育が抱える悩みでもあります。

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