ナイキの「選別」で始まった靴小売りの地殻変動 小売り各社を揺さぶる大手ブランドの直販強化

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「エービーシー・マートの一人勝ち」。多くの株式市場関係者は口をそろえて、今の日本の靴業界をそう評する。靴や衣料品の輸入販売が祖業のエービーシー・マートは、現在もナイキなどと強いパイプを持ち、大手NBの直販強化の流れにあっても業界首位の座を揺るぎないものとしている。

およそ10年前にチヨダが売上高トップの座を明け渡して以降、その差は年々拡大してきた。コロナ禍以降、大幅な営業赤字から抜け出せていないチヨダやジーフットとの明暗は、いっそう浮き彫りとなっている。

当然、有名ブランドスニーカーの有無によってすべての勝負が決まるわけではない。ただ、「知名度の高いブランドの商品が置いてあることで、客の店舗に対する信頼度が上がりやすい」(業界関係者)。また、話題性のある商品を集めた鮮度の高い品ぞろえは、店舗の集客力に直結する。その意味では、ブランドスニーカーが各社の差の拡大に拍車をかけていることは確かだ。

小売りもメーカーにならないといけない

売り場作りの面でも、エービーシー・マートの戦略の巧みさは際立つ。

同社は現在、「グランドステージ」「プレミアステージ」「メガステージ」の3業態を主軸に展開する。グランドやプレミアはスニーカーのほかにスポーツアパレルを豊富に揃え、ファッション感度が高い人に向けた情報発信に力点を置く。それに対しメガは、ファミリー層を対象とした幅広い品ぞろえが特徴。複数の業態を使い分けることで、ブランド側が進める“区分け”に対応する狙いもあるだろう。

NBの直販シフトが止まらない中、チヨダの安立邦広マーケティング部長は「小売りもメーカーになっていかないといけない」と危機感をあらわにする。自社のPB(プライベートブランド)商品の開発を強化していくということだ。

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