中国と北アフリカとは大きな違い、だが格差の解消、蟻族の生活改善が急がれる《アフリカ・中東政情不安の影響/専門家に聞く》

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 80年代前半には民主化を巡る言論も活発だったが、いまはそうではない。天安門事件以後、開発独裁的なやり方を容認するようになってしまい、学者や知識人の多くも特権的な地位を与えられて権力側に取り込まれてしまった感がある。

一方で、「蟻族」と呼ばれる大学卒なのにコネなどがなく、定職につけずにアルバイトで狭い部屋に集まって暮らしている人々が、大都市の北京、上海、深セン、武漢などには10万人単位でいるとされ、この人たちが、まだ希望を持って頑張っている間はよいが、成長が止まって希望が持てなくなってくると暴動に結びつく可能性があり、こうした人たちに対して、生活環境の改善、所得の向上や社会保障の整備ができるかが重要だ。
 
 胡錦濤、温家宝政権は「和諧社会」をスローガンに掲げているがゆえに、国民の期待が高まりやすい面もあり、その割に党・政府の対応は不十分、という不満もある。
 
 もちろん、ネットについても、規制の網の目をかいくぐる工夫もなされているので、万全とはいえないし、その力は無視できない。次の政権は、所得や生活面での安全性を向上させて、日々の暮らしが物心両面から改善したという実感がわくようにしていかなければならない。格差の是正に向けては、税制改革など難しい改革に手をつけざるを得ない局面に来ているという見方もできる。

政府は改革ができるかできないかは別にして、問題の認識能力や分析力は非常に高い。一応、5カ年計画を出す前に、国民の意見を募集するとか、地方政府の対応に不満を持つ人が中央政府に直接訴えることができる「国家信訪局」をこの1月に温家宝首相が訪れ、陳情者と交流するなど、している。単なるパフォーマンスとの見方もあるものの、政府が国民の不満を気にしているということの表れではある。
(大崎 明子 =東洋経済オンライン)

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