永守重信・日本電産社長--365日、朝から晩まで母に教わった全力疾走(下)

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 が、ダメとわかれば、スパっと気持ちを切り替えることができるのも、永守である。昨年8月に買収した米電機大手エマソン・エレクトリック社のモーター事業(EMC)では、従来の「対話型」に回帰した。

永守にとって、EMCは過去最大級の大型案件。しかも、買収を持ちかけてから、10年の歳月が流れている。毎年のように訪米したが、最初は鼻であしらわれた。「売ってやってもいいが、お宅の利益は100億円。買うカネはあるのかい」。

それでも、粘り強く交渉を続け、ついに昨年、合意に達した。10年経って、日本電産の営業キャッシュフローは900億円。潤沢な資金力も、もちろん、ものを言った。

EMC買収の意味は大きい。同社は米国の白物家電大手ワールプールを顧客に持ち、家電用モーターでシェアトップ。これまで手薄だった米家電市場で、日本電産の存在感が一気に膨れ上がる。

それ以上に重大なのは、EMCは永守の“ほら”を実現する切り札になる可能性があることだ。

売上高3倍、15年度2兆円の“ほら”を達成するには、モーターの新しい成長市場=自動車用モーターを押さえることがカギになる。

日本電産はパワーステアリング用モーターなどを手掛けているが、車載市場での世界シェアは5%未満。本命の駆動用モーターについてはまだ納入実績がない状態だった。

そこで、クローズアップされるのが、レアアースが不要で駆動用に展開できる「SRモーター」だ。EMCは長年、SRモーターを研究し、同分野の特許の半分を所有する。この次世代モーター、まずはトラクターなど農機、重機に投入するが、永守がその先ににらんでいるのは、電気自動車(EV)の大市場だ。

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