和田秀樹「70代でも元気な人とそうでない人の差」 定説を覆す70~80代向けの書籍がよく売れる訳

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――著書のタイトルにもなっている『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』――。両者の差は、「レジリエンス(回復力)と免疫力にある」とおっしゃっています。その点について詳しく教えていただけますか。

私たち人間の身体というのは、病気やケガをしても自ら回復する能力、いわゆる「レジリエンス(回復力)と免疫力」が備わっています。その力は適度に身体を動かしたり、脳を使ったり、食事などでしっかりと栄養を摂ったりすることによって高まっていくんですね。

ところが、ここ数年の日本はレジリエンスと免疫力を高めるどころか、下げる方向に進んでしまった。それが、コロナによる不要不急の外出の自粛です。

高齢者の多くは、重症化のリスクを恐れ、家に閉じこもるようになりました。毎日の散歩を控え、友人たちとの趣味の活動や食事会にも行かなくなったのです。それでは筋力も衰え、脳の刺激も減る一方……。食欲もなくなり、かえって免疫力が落ちてしまった人も多いかもしれません。

1日中、誰とも話さず、テレビの前で過ごすような変化のない毎日を送れば、心の元気もなくなります。知らずしらずのうちに、うつ状態に陥ったり、実際にうつ病や認知症を発症したりする高齢者は増えていると感じます。

世の中の流れに逆らっている人のほうが元気

――先生のクリニックでは、高齢者の患者さんも多いと思いますが、実際に接してみていかがですか。

僕の保険診療の外来に来ている患者さんたちの中には、本人ではなく、家族が薬を取りに来るケースが増えました。

理由を聞くと、「コロナを怖がって外に出なくなってしまった」と。「ちゃんと歩いていますか?」と聞くと、「全然歩いていないんです。だから、最近よぼよぼしてきてしまいました」いう人が多いんですね。

和田秀樹/1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって、高齢者医療の現場に携わっている。主な著書に『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』(マガジンハウス新書)などがある(撮影:今 祥雄)

一方、コロナ禍でも外来に訪れる患者さんは、「外に出ないと歩けなくなるから」と積極的に歩いている様子。つまり、世の中の流れに逆らっている人たちのほうが、元気だったりするんです。

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