和田秀樹「70代でも元気な人とそうでない人の差」 定説を覆す70~80代向けの書籍がよく売れる訳
――周囲の70~80代の方々を見ていても、若々しくアクティブに行動される方が多いように感じます。
僕が執筆した70~80代向けの本では、「長生きすることよりも、元気でいること」を提案しているんだけど、それも多くの高齢者に支持されている理由だと思うんですよね。
例えば、長生きするために血圧や血糖値を下げる薬を飲み続けたり、節制をして食べたいものを我慢したり。そうやって病や検査結果の数値におびえながら長生きを目指すより、自分のやりたいことをやり、適度に食べたいものを食べ、自由にのびのびと暮らしたほうが、結果的に長い高齢期を元気に乗り切ることができる――。
そういったことを伝えているわけですが、「長生きするより、元気でいたい」と願う高齢者が増えているからこそ、僕の本に共感する人が多いのかもしれない。
ただ、今の高齢者向けの本やビジネスは、長生きするための健康情報や終活、介護の分野が中心で、高齢者が楽しむためのエンターテインメントやグルメ、ファッションに力を入れていないのが現状です。
65歳以上は全国に3600万人超と言われているにもかかわらず、シニアをメインターゲットとしたビジネスの拡大はどの業界も二の足を踏んでいるように見えます。
――市場が大きいにもかかわらず、そこにビジネスチャンスを感じている企業がまだ少ないということですね。
そうです。ジャパネット(HD傘下のジャパネットサービスイノベーション)が豪華客船クルーズのツアーを販売し始めましたが、そういったセンスが今の時代には必要ですよね。おそらくジャパネットでは、通販の顧客にシニア層が多いことを実感していたんじゃないかと思うんです。
マーケットを適正につかむことはとても大事です。そうでないと、需要と供給のミスマッチが起きてしまいます。
景気低迷を打破するのは団塊世代の消費力
――近著『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』では、「団塊世代の“消費力”こそ、社会が必要としている」とありました。
長らく続く不況の一因は、「消費力不足」にあり、「生産力不足」にあるわけではないと思うんですね。
生産量を上げれば上げるほど、物余りになり、価格が落ちていく。利益が上がらないから、給与も上がらず、物を買わなくなるわけです。それでは一向に景気が上向きません。
生産力を上げることよりも、消費を伸ばすことが重要な今の時代において、欠かせないのは、一番のボリュームゾーンである団塊世代の「消費力」です。高度経済成長期の日本の消費を支えてきたのはまさしく団塊世代ですが、それは今も変わらないのです。
仕事を引退すると、「自分はもう働いていないし、何の生産性も上げられない」「社会の役に立っていない」と、卑下する人もいますが、そんなことはない。消費によって社会を支え、経済を動かしていることに胸を張ってもらいたいです。
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