大まかに言うと、「資産所得倍増」以前に、その前提条件として幅広い層の国民にあってマネーリテラシーの向上が必要なのだ。
そのために必要なことを具体的に分解すると、(1)金融教育全体の強化(児童学生への教育も、大人向けの教育も)、(2)金融教育情報を伝達する人の育成、(3)個人の金融的決定と行動をアシストする人の支援が必要だ。
学校の数学や社会科科目で教えられることが望ましい
NISAやつみたてNISA、加えてiDeCoなどの利用枠を拡充すること自体はおおむねいいことだが、単にそれだけでは、拡充が十分生かされない。
金融教育では、学校段階の教育と、すでに学校を離れて大人になった人向けの教育の両方が必要だ。
学校での金融教育に関しては今年度から高校の家庭科でお金に関する教育を始めるようになったことは一歩前進だが、まだ不足だ。
高等学校の卒業生などは、たとえば「毎月分配型の投資信託は資産形成の対象としてなぜ不適切で、具体例について計算するといくら損なのか」といった、もっぱら数学的な計算ができなければならない。また、当然の社会科的知識として「金融ビジネスの利益の構造と実態」を知っているべきだろう。
前者は数学、後者は何らかの社会科科目で教えられることが望ましい。いずれも「生きる力」を強化するために必要な知識だし、同時にトレーニングが必要だ。
また、大人に対するお金の教育の体系的提供にNHKが消極的に見えるのは残念なことだ。金融機関や保険会社が番組スポンサーになる民間放送局には一定の難しさがあるだろうが、「もっぱらテレビから情報を取る世代」はもう10年から長くて20年くらい存在感があるだろうから、テレビ局への期待はまだ大きい(しかし、いつまでも続くわけではなさそうだ)。
もちろん、金融庁は、正しいマネーリテラシーをテレビ局だけではなくあらゆるチャネルを使って普及に努めるべきだ。ただ、テレビで英会話講座があっても国民の多くが英語を喋るようにはならないように、マネーリテラシーもこれを普及してくれる人が多数必要だ。
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