岸田政権の資産所得倍増計画に絶対に必要なもの 「つみたてNISA枠」を増やすだけでは不十分だ!

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富裕層には追加的に独自に頑張ってもらうこととして、優先手順として「資産形成層」(主に20代から40代くらいまでの老後に備えて資産を形成しようとする人たち)の資産所得の増加策から取り組むのがいいのではないか。上記の(2)の繰り返しだが、高齢者も公平にメリットを得ることができる。

筆者の計算では、生涯年収平均750万円くらいまでのサラリーマンなら、月額7万円のつみたてNISAと月額2万3000円のiDeCo(個人型確定拠出年金)をフルに利用すると老後に備える資産形成は「まあまあ十分」だ(注:個人の事情によって差がある)。「分厚い中間層」の所得で下半分くらいまでの資産形成は、これで面倒を見ることができよう。

年間「40万円」が「84万円」になると、「倍増」という言葉が使えるし、嬉しいおまけ(数字が12カ月で割り切れるようになる)までつくので、政策の印象は悪くないはずだ。

「つみたてNISA倍増!」だけでは足りないもの

前回と重複して説明したように、筆者は、つみたてNISAの利用枠倍増は良い政策だと思う。しかし、現実的にはこれだけでは足りない。

 たとえば、つみたてNISAが良い制度だとしても、なぜそれが良いのかがわからない人に「絶対にやるべきだ!」と勧めるのは、犯罪に近い誤りだ。つみたてNISAといえども、「絶対に損をしない」などと言い切れるものではないので、投資する本人が納得して判断する必要がある。

個人が自分で判断できることが大事なのだが、率直に言って、老若男女いずれにあっても、十分な知識と判断力(いわゆる「マネーリテラシー」に含まれる)を持っている人は多くない。

また、金融機関と取引を開始し、つみたてNISAの口座を開設し、どの商品を選んだらいいかを決定して、実際に積立投資を始める手続きは、多くの人にとって、それなりに「億劫」だ。誰かの手助けが欲しい人が少なくあるまい。

もちろん、お金の扱いで必要な意思決定と手続きは、つみたてNISAにかかわるものだけではない。銀行や証券会社の口座開設や、退職金などの運用方針の決定、運用商品の選択、高齢者の場合は将来の認知症対策や、親子2代での「2世代運用」の方法など、資産運用周りだけでも複数の重要な問題がある。

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