韓国の後塵拝す日本の低賃金、労働者側の問題点 勤勉だがモチベーションは低い日本の労働者

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日本の労働者は、ワクワクしながら改革やイノベーションに挑戦しているでしょうか。残念ながら、多くの国際調査から、日本の労働者の仕事に対する意欲や満足度は極めて低いことがわかっています。

国際機関「世界経済フォーラム」は、「日本の会社員の不幸度(を示す調査結果)は、国際的な職場調査のもはや定番のようなもの」と結論付けています。

つまり、日本の労働者は大嫌いな仕事を会社に命じられて黙々と取り組んでいるだけで、より良い仕事をして大きな価値・新しい価値を生み出そうという前向きな「モチベーション」は、かなり低いのです。

なお、諸外国の労働者は低賃金の企業からさっさと逃げ出しますが、日本の労働者は我慢して勤め続ける傾向があると言われます。日本では、低賃金でも労働者を確保できるので、低賃金の企業が温存されてしまいます。

以上から、「日本の労働者は能力が高いし、勤勉で懸命に働いている」という通説は間違っています。日本の労働者は能力もモチベーションも低い→労働生産性が上がらない→賃金が上がらない、これが労働者サイドから見た日本の低賃金の基本構図なのです。

ここまで読んで、「政府や経営者よりもわれわれ労働者が悪いということか」「低賃金は労働者の自己責任なのか」と立腹した読者がおられるかもしれません。

今回の考察は、日本の労働者の能力とモチベーションの低さが低賃金の直接の原因になっているという事実を示したにすぎません。責任論ということでは、教育投資や働き方改革を怠ってきた政府や経営者の責任が重大だと思います。

自分でできる有効な対策とは

ただ、責任があるかどうかは別にして、労働者は、低賃金で惨めな生活をしたくなかったら、政府や経営者の改革を期待して待つだけでなく、自分なりの対策を講じる必要があります。具体化には以下の3点です。

① 自己啓発などリスキリング(学び直し)で能力アップに努める

② 会社の中の不合理な働き方や賃金制度に対して声を上げる

③ 低賃金が解消されないなら会社を辞めて転職(あるいは起業)する

政府も経営者も、そして労働者も、低賃金の問題をわがことと捉えて、解決に向けて動き出すことを期待しましょう。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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