キーエンス、"カリスマ会長"退任の影響度 平均年収1440万円、高収益体質を守れるか

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キーエンスが手掛ける3Dプリンタ

昨年秋以降に円安が急進したことも追い風となっている。キーエンスは佐々木前社長時代に「海外売上比率50%」を目標に掲げたが、今2015年3月期は第3四半期までの海外売上比率が52%に達し、前2014年3月期(通期)の45%から大きく伸ばした。

キーエンスは海外で販売するFAセンサーなどのほとんどを日本から輸出(国内協力工場に生産を委託)しているため、円安メリットを十二分に享受できた格好となった。それが前年同期比で3割を超える大幅営業増益の牽引役になったとみられる。

利益の伸び率もさることながら、第3四半期決算で目につくのは、売上高に対する営業利益率が52.2%と、実に5割超にも達している点だ。キーエンスが通期決算ベースで最後に営業利益率5割を超過したのは2008年3月期。このままのペースが続けば、7年ぶりの営業利益率5割超を達成することになる。創業会長の退任時期としては、まさにこれ以上ない“花道”のタイミングといえる。

社内に創業家出身者はいなくなる

当面は名誉会長として大所高所からのアドバイスを続けるにしても、今年6月には70歳になる滝崎氏。取締役から完全にリタイアする日はそう遠くないかもしれない。滝崎氏が築いてきた高収益モデルの“DNA”は今後、どのように受け継がれるのか。

「公平・公正の観点から、キーエンスの役員・社員と三親等以内の方はご応募いただけません」――。2016年4月に向けて新卒社員の募集を開始した同社のホームページには、このような断り書きが明示されている。この大原則は、新卒社員の募集時のみならず、創業家に対しても貫かれている。

現在、キーエンスの個人大株主は、滝崎会長(保有比率7.71%)が2位に名を連ねるほか、7位に親族の滝崎武史氏(同1.47%)がいる程度。役員には滝崎会長のほかに創業家出身者はおらず、社員の中にもいない。「(滝崎会長の退任後は)創業家の関係者が事業に関与することはない」というのがキーエンス社内での認識だ。

高収益、高年収、高株価――。創業者が去った後も、キーエンスの特性は維持できるのか。滝崎氏が経営者ではなく、オーナーとしての色彩を強める中、唯一の代表権者となる山本社長の舵取りが試されることになる。

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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