私たちはこれからひとしきり、昔話をします。懐古してひたります。しばしの間、我慢してください。そうやってエクスキューズすれば、相手も心の準備ができます。「説教」に発展しないとわかっていれば、気もラクですし、その間、トイレに行ってもいいし、スマホをいじってもいい。若い世代同士で話し始めるのもいいでしょう。
内輪ウケはなるべくしない。でも避けられないときにはひと言断る。それがその場を仕切る立場の配慮というものです。
相手の話を引き出す役に徹する
× 自分の昔の話をする
〇 相手の今の話を聞く
「あそこのビルは昔、○○商事が入っててさ。若い頃は毎日通ったもんだよ」
「へー、今はそうするんだー!? 私が新入社員の頃とずいぶん違うなー」
「その頃、●●っていう歌手が人気でね。あ、今の子は知らないか。懐かしいなあ」
部下・後輩・年下と話していて、何かにつけては過去の話をする人がいます。
仕事の経験、プライベートの知識、自分なりの価値観をシェアしたい。昔の思い出話を聞いてほしい、「そうなんですねー」と感心してほしい……。ですが、これは不正解です。
そもそも、人は本能的に自分の話をしたいもの。 いつもなら「相手の話にも関心を持とう」「置いてけぼりにする内輪ウケはよそう」とぐっとこらえている人でも、「下」を前にすると、気が緩んでしまいがち。
相手としては、なかなか関心を持ちにくいうえに、口を挟みにくい。「共通の話題を通じて、対等に同じ目線で会話をする」という理想からはほど遠い話し方です。
結果的に「やれやれ、自分語りが始まった」「ずいぶん楽しそうですけど、こちらは興味が持てません」とうんざりされてしまうというわけです。
「いやいや、相手だって楽しそうに聞いてた」と思うかもしれません。もちろん本当に感心してくれることもあるでしょう。ですが、相手は「下」の立場であることを忘れてはいけません。興味がなくても興味があるそぶりをしなくてはいけない、という関係の不公平さが前提としてあるわけです。
そういうバイアスを込みで考えると、「少し気にしすぎかな?」というぐらいに「昔の話は金輪際しない」と腹を決めて、口にチャックしてしまうのがいいでしょう。
部下・後輩・年下と話すときには、相手の話を引き出す役に徹するのが正解です。
「このあたり、来たことある?」
「今のシステムはそうなってるんだね。使い勝手はどう?」
「熱心に聞いてるアーティストとかいる?」
ほかにも、相手が現在取り組んでいる仕事、将来的にやってみたい趣味などを聞き出し、「それはどういうもの?」「えー、知らない。教えてくれる?」と、むしろ下に潜り込んで「教わる」立場になれれば、なおいいでしょう。そうすれば「話しやすい人」「好奇心旺盛な人」という印象を得ることができます。
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