投資家が列をなす「空き家再生集団」のすごい手腕 日本全国で1570軒の空き家を生き返らせた

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全古協の理事を務める古家再生士の工藤氏が金沢の金石地区で手がけた物件。所有者は改修後の室内を見て、こんなになるんだったら売らなければよかったと言ったそうだ(筆者撮影)
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2016年5月から2021年12月末までの約5年半で西は熊本県から大阪府、京都府などの関西圏、三重県、愛知県の中京圏、そして首都圏の一都三県で1570件の空き家を再生してきた団体がある。全国の空き家再生事例は多くても1エリアで40~50件という例までであることを考えるとこの数は驚異的だ。どうやればそれだけの数を再生できるのか。そこには目から鱗の手があった。

ニーズが高い戸建て賃貸に目をつけた

その団体、全国古家再生推進協議会(以下全古協)は2010年、リーマンショック後の不景気に悩む東大阪市の塗装関係の町工場経営者で、現在全古協の理事長を務める大熊重之氏の新規事業模索から生まれた。

たまたま依頼された中古賃貸改装の成功をきっかけに、賃貸不動産の可能性に開眼した大熊氏は、1人の多能工が塗料を用いて行う低予算での差別化リフォームを開発。多くの賃貸マンションリフォームを受注すると同時に、多能工を養成するスクールも立ち上げた。

だが、せっかく多能工を育てても営業力がなければ仕事にはありつけない。次の仕組みが必要と考えていたときに、今度は一戸建てのリフォームの依頼を受ける。大熊氏はそこで賃貸市場での一戸建ての少なさを知ることになる。アパート、マンションには賃貸に出すことを想定して建てられた物件が多くあるが、賃貸目的で建てられた一戸建ては皆無に近いのだ。

一方、ペットや子ども、音の問題などから一戸建てを借りたいというニーズは非常に高い。借りたい人は多いのに、物件は少ない。しかし、幸いというべきだろうか、世に空き家は多く、これからも増える。であれば職人、工務店と空き一戸建て、改装、賃貸化、不動産投資家をつなげることで新しいビジネスが生まれるのではないか、と大熊氏は考えた。

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