コロナ療養中の英国看護師が訴える「憤りと不安」 「コロナと共存」選んだイギリスは正しいのか

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例えば、私は待機手術患者用のPCR検査室に勤務しているが、今でもときどき症状はないものの簡易検査で陽性になる患者が発覚することがある。それなのにソーシャルディスタンスは廃止されたのだ。

先日、勤務先の病院の外来を通りかかったが、その混雑具合には唖然となった。まるで真夏の湘南海岸の海水浴場のように、患者と付き添いの家族であふれているではないか。これでは誰が感染しているのか、まったくわからない。

コロナは収束していない。そして、今まさにこの原稿を書いている私自身が、コロナに感染している。2020年から2021年の間、合わせて12カ月以上もコロナ病棟で勤務し、無感染でがんばってきたのだが、家庭内で感染してしまった。次女が一番先に感染したことから、感染源は学校と考えられる。

スタッフの10%前後が自宅療養中

医療介護現場の職員は、一般の人たちと自主隔離と職場復帰の方法が異なる。ここでNHS病院の職場復帰について説明していこう。

簡易検査をして陽性になった日を1日目とし、5日目と6日目に連続して簡易検査を受ける。陰性で症状がなければ、7日目から職場復帰が可能だ。7日目以降も体調が戻らず病欠をとる場合は、診断書の提出が求められる。

原稿を書いている現在、私のコロナ陽性は8日目で、呼吸器に少し影響が出ているため、自宅療養中だ。イギリスの多くのGP(家庭医)はオンラインで診察を行っており、私も診断書の受け取りから職場への提出まで、すべてオンラインですませている。

現在、私が勤務する部署では、全スタッフの10%前後がコロナ感染や後遺症で自宅療養している。最も長い人では半年近く休んでいる。この同僚のように、コロナ後遺症が理由で3カ月以上の病欠を余儀なくされている人は、NHSの職員だけで1万人以上もいて、イギリス全体では200万人にも上るとされる。

そしてこの問題こそ、「コロナと共に生きる」としたイギリスの闇の部分といえる。

これだけの人がコロナ後遺症で苦しんでいるにもかかわらず、彼らを守るための法的整備が進んでいない。療養による休暇の取得日数の上限、給与補償、通院のための遅刻・早退・休暇は病欠扱いになるのかなど、働く側にとっては「ライフライン」ともいえるほど重要な点なのだが、コロナ後遺症に関して、現状は雇用側の判断に任されているのだ。

コロナ後遺症は現在進行形だ。回復までにどれほどの期間を要するかも含め、研究の途上にある。だからこそ法整備もなく、ただ「コロナと共に生きる、だから感染対策の必要はない」と言われても、無理というものだ。不安を募らせる人は増えていくだろう。

コロナと共に生きるためには、まずは国民が安心をしてコロナを受け入れられる環境づくりが、これからのイギリスには求められる。

ピネガー 由紀 イギリス正看護師、フリーランス医療通訳

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Yuki Pineger

日本での看護師免許や勉強経験はなくイギリス義務教育(GCSE)、高等教育A-levelを経てマンチェスター大学看護学部卒業。現在は、イギリス中部に在住してNHSの大学病院に勤務。通常は外科部門に所属して手術前後の患者看護に当たる傍ら、学生指導も担当している(2020年4月から新型コロナ感染病棟に期間未定で異動中)。

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