コロナ療養中の英国看護師が訴える「憤りと不安」 「コロナと共存」選んだイギリスは正しいのか

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現在も残っている感染対策の1つは、院内でのマスク着用だ。ただし、一部のNHS(国民保健サービス)病院では、マスク着用を義務から個人の責任で着用してもらうルールに切り替えている。このほか、入院患者や待機手術の患者への事前の感染検査も続いている。

院内で大きく変わった点として挙げられるのが、ソーシャルディスタンスの廃止だ。パーテーションは取り除かれ、受け入れ患者数はコロナ以前と同じレベルまで増やした。患者家族のお見舞いや付き添いも再開された。

コロナ感染患者の入院に関しても、以前のような「コロナ感染専用病棟」がない病院がほとんどだ。入院患者はそこまで多くなく、一般病棟にある個室を感染患者用にしている。

ワクチン接種も個人の判断に方針転換

国は当初、医療や介護現場の職員にはコロナワクチン接種を義務とし、未接種の職員はクビになる警告が公式に出された。しかし、予想外に多くの医療介護職員がワクチンを未接種だったこと、また、深刻な職員不足に悩む雇用側から猛反発が起こったことなどの結果、あれだけ強気に「クビ」を叫んでいた国はあっさり前言を撤回した。以降、医療介護職員のワクチン接種に関しては、個人の判断に任されている。

このように段階を踏まず、一気に感染規制が廃止されたことに、疑問の声も噴出した。

もちろん、経済を通常に戻し、感染対策のために投入された莫大な予算を削減していくことは、国の仕事ともいえる。実際、イギリスでは首相が「2022年1月だけでも検査に20億ポンド(約3300億円)を費やした」と述べているように、感染対策には莫大なコストがかかっている。

短期間で状況が変わったという点でいえば、NHS病院も同じだ。

今のNHSは待機手術の待ち期間が過去最悪と言われ、3万人以上の人が1年以上も手術を待つ社会問題となっている。本来なら1件でも多く手術をこなす必要があるのだが、ソーシャルディスタンスのために患者の受け入れ数を制限されていた今までは、1日にできる手術件数が限られていた。

NHSというと「国営病院」と解釈されることもあるが、実際には患者への診察や治療を行い、国から診療報酬をもらう仕組みをとっている。「患者は0割負担、国が10割負担」と説明をすればわかりやすいだろうか。

大幅に落ち込んだ収入を回復させるためには、患者の収容能力をコロナ以前と同レベルまで引き上げなければならない。多くの病院がコロナ感染専用病棟を設置していないのも、コロナの入院患者が減ることで「空きベッド」ができるリスクがあるからだ。

手術や検査を目一杯入れ、医療的ニーズがなくなった患者はすぐに退院させられる。こうして稼働率と回転率をあげなければ、経営が厳しい。

しかし、病院がここまで感染規制を解除してしまうことについて、現場にいる私たちには大いに疑問が残る。

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