空き家の実家が売れない!誰もが大苦戦するワケ 実家じまいに手こずった松本明子さんが聞く

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上田:今後は松本さんのようなケースがさらに増えるはずです。というのも1947~1949年に生まれた団塊の世代が、2025年にはみんな75歳以上の後期高齢者の仲間入りをするからです。

彼らは人口にして約800万人。日本の総人口の約6%に当たる大集団で、働き盛りの頃に高度成長期を支え、こぞってマイホームを購入した世代です。今後、この世代が続々と施設に入所したり、子どもと同居するようになったりしたとき、空き家が大量に発生する可能性があるのです。

しかも一方では少子化で人口が減り続けているのに新築住宅が建ち続けている。空き家が増えるのは当然なのです。

松本:そうなると人口が減っている地方などはますます空き家が増えそうです。

買い手がいなければ売れない、貸せない

上田:空き家は地方やバスの便が少ないなどの利便性の劣る地域に限った話ではありません。首都圏でも郊外だけでなく、都心部にも相当数の空き家があります。

ただし地域として空き家が増えているとしたら、その地域の魅力や活力が低下し、住む人が減っている証拠です。住人の減少は、スーパーや銀行、病院など生活に欠かせない施設の撤退につながります。そうなるとますます住む人が減って、空き家が増えていきます。いくら実家を売りたい、貸したいと思っても、それを買いたい、借りたいと思ってくれる人がいなければ、どうしようもないのです。

松本:売れない、貸せない。高松の実家じまいで痛感しました。

上田:ですから、人口が流出する地方の空き家率はどうしても高くなります。空き家率の全国平均は13.6%ですが、地方はこれを上回るところがほとんどです。

最も高いのは山梨の21.3%。以下、和歌山20.3%、長野19.6%、徳島19.5%、高知19.1%、鹿児島19.0%、愛媛18.2%、香川18.1%と続きます。山梨、長野は別荘が多いことも要因です。

松本:四国四県はすべて18%超えですね……。大都市圏はどうですか。

上田:首都圏は東京10.6%、埼玉10.2%、千葉12.6%、神奈川10.8%。近畿圏は大阪15.2%、京都12.8%、兵庫13.4%。中京圏だと愛知11.3%などとなっています。

首都圏の空き家率が地方と比較して低いのは、地方から首都圏へ若者や子育て世代の移住が多いためです。地方でも顕著でして、たとえば仙台、福岡、札幌などの都市部は、周辺から人口を吸い寄せるため空き家率が低くなっています。

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