空き家の実家が売れない!誰もが大苦戦するワケ 実家じまいに手こずった松本明子さんが聞く

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上田:わかりました。日本の空き家は1983年の調査では約330万戸で、総住宅数に占める比率(空き家率)は8.6%でした。それが2018年の調査では約849万戸まで増加し、空き家率も13.6%と、実に日本の住宅の約7戸に1戸を占めるようになっています(総務省「平成30年 住宅・土地統計調査」)。この35年で空き家は約2.5倍に増えたのです。

2038年には空き家率が30%を超えるという予測もあります(野村総合研究所「2040年の住宅市場と課題」)。もしそうなれば約3戸に1戸が空き家です。

空き家はなぜ増えているのか?

松本:なぜそんなに空き家は増えてしまったんでしょう。

上田:理由の1つには住宅を作りすぎたことが挙げられます。

核家族化の進展などで1983年から2018年までに世帯数が1880万世帯増えたのに対して、住宅総数は2380万戸も増えました。世帯数の増加に比べて500万戸も多くの住宅が建設されたのです。

住宅用地の特例(固定資産税等の減免)という制度ができて、空き家の解体が抑制されたことも住宅総数が増えた要因の1つになっています。

松本:世帯数の伸び以上に新しい住宅をバンバン作ったのと、新しい制度ができて空き家の解体が抑えられたことで住宅の数が増えたわけですね。

上田:そうです。もともと新築住宅は関連産業の裾野が広く経済効果が大きいんです。

一方で中古住宅のリフォームは利用する部材も少なく、経済効果が新築に比べて小さい。だから政策的にもリフォームより新築に力を入れる。景気対策になりますから。

松本:ほかにも空き家が増えた理由はあるんでしょうか。

上田:やはり大きいのは少子高齢化です。

空き家が発生する最も一般的なケースは、親が老人ホームなどの高齢者施設に入ったり、子どもの家で同居するようになったりして、それまで親が住んでいた家が売却や賃貸などで活用されないまま空き家になるというものです。

核家族化が進んだ日本では、子どもたちが実家を出て独立し、自分の家を持つことが多いですよね。

長男夫婦などが実家で親と同居している場合は別ですが、そうでないと実家にいるのは親だけですから、その親が家を出てしまえば、売るなり貸すなりしない限り、実家は空き家になってしまうのです。

松本:それってまさに私のケースです。私には兄が1人いるんですが、兄も私も高松の実家を出て東京で家を持ちました。それで私が、年をとってきた両親を呼んで同居するようになったものですから、高松の実家は空き家になったわけです。

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