新宿の文壇バー主人「コロナ禍2年」の切実な体験 営業制限下で協力金バブルを経験した故の苦悩も

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前述したように、店のマスターであり、ジャーナリストでもある肥沼氏が、この協力金バブルについて、とある媒体で記事を出したところ反響が大きく、ネット番組から声がかかり、スタジオ出演することになった。

「そのネット番組の台本を見ると『協力金で儲かった店のマスター』としての出演でした。僕は『儲かった』のではなく『儲かってしまった』に変更してほしいと頼んだのですが、その番組では『儲かった』というニュアンスで紹介されてしまって嫌な思いをしました。放送後はネット上で『あの店のマスターは協力金で高級車や高級腕時計を買ったらしい』といったデマや誹謗中傷が飛び交って大変でした」

周囲には協力金の存在を知らず閉めた飲食店も

ゴールデン街の中や周辺には高齢の方が経営している店舗もあり、協力金の存在を知らなかったり、コロナを機に店を閉めてしまった店舗もあるという。

コロナ前は頻繁に昼の時間帯に文学に関するイベントを行っていたこの店で、先日久しぶりに昼間にイベントを開いたら、満席になったそうだ。確実に客足は戻ってきており、この夏には完全に戻ってくるのではないかと肥沼氏は推測している。イベント時、邪魔だったのでパーテーションも取り払い、店はほぼコロナ前の状態に戻り始めている。

今回取材をした「月に吠える」は都知事の要請に従い、協力金バブルも経験して、ようやく今、客足を取り戻し始めている。しかし、そうでない店もあるのではないだろうか。実際、緊急事態宣言中やまん防の最中でも都の要請に従わずに営業している飲食店を見かけたことがある。

また、筆者も含め人々の多くが「コロナ慣れ」している現状も感じ取れる。昨年、まだワクチン接種が進んでいない時期に映画を観に行った際、映画館の席は1席空きで、換気もしているというアナウンスが流れていたが、先日映画館に足を運んだところ、全席開放していた。人々のコロナへの意識も変わってきているようだ。

厳しいコロナ禍を乗り越え、以前の賑わいを取り戻しつつある(筆者撮影)

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本連載では厳しい行動制限を課されたコロナ禍において飲食店を経営され、現在も運営を続けている経営者の体験談を募集しております。取材の申し込みは以下(https://form.toyokeizai.net/enquete/tko2206c/)よりお願いいたします。
姫野 桂 フリーライター

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ひめの けい / Kei Himeno

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをしつつヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好きすぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナ。

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