「死ぬのが怖い」と思ったときに考えてみたいこと がん患う医師「死に対する恐れは人それぞれ」

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そのことにようやく気づき、50歳を過ぎてからは、家庭を中心に生活をするようになりました。また60歳を過ぎると、孫の世話をするために大学を早期退職しました。このような判断は自分なりに良かったと思いますが、それでも遅かったと思っています。

多くの方は働きすぎて、家族を失う直前に問題に気づくに違いありません。私の外来でも「妻が離婚を言い出したので何とかしてほしい。自分の態度を改めるつもりだ」と言う夫もいますが、もう「時既に遅し」です。もっと早く、妻が離婚を決断する前のサインを出しているときに気づくべきだったと思いますが、一般に男性はかなり切羽詰まらないと気づかないようです。

「思い切って自分の気持ちを伝えればよかった」については、「自分に正直な人生を生きればよかった」によく似ていると思います。

多くの人が素直に自分の気持ちを伝えることができないと思っているのではないでしょうか? しかし、それも人生です。そのとき自分の気持ちを伝えることができなかったから、別の人生が開けているといえるでしょう。私は、自分の気持ちを伝える必要もないと思っています。特に、家族に関しては日ごろの行動でわかってくれるはずです。

流されながら生きている人が大半

「幸せをあきらめなければよかった」という後悔も多くの人にあるものだと思います。ほとんどの人は「幸せに生きよう」と頑張ります。良い就職をして、良いパートナーを選び、良い家庭を築いて幸せになろうとするのは当たり前のことだと思っている人も多いでしょう。

しかし、多くの方はそのような気持ちがあっても、実際に思い切った行動ができないと思います。なんとなく流されながら人生を過ごしている人が大半でしょう。私もその1人です。結果的に良い仕事に恵まれ、家族にも恵まれましたが、それほど必死になって頑張った記憶はありません。

若いころ、工学部から再受験して医学部に入ったのも、薬局を経営していた親類のすすめです。今の妻と知り合ったのは、大学のテニス部の先輩後輩の間柄でした。しかし、医者になって大阪大学で勉強したいと考えたのはかなり強い意思があったと思います。その後は大学の人事に乗っかって病院を転々としました。

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しかし、40歳のときにどうしてもアメリカに留学したい気持ちが強くなり、後のことを考えずに渡米しました。これは幸せになろうと努力したわけではなく、「どうしてもやりたい」という意思が強かっただけです。

どちらにしても家族に迷惑をかけましたが、今では思い切って行動したことが良かったと思います。両方ともある程度成功したので後悔はありませんが、もしそれでひどい目に遭っていたら多分後悔したに違いありません。人間はうまくいけば後悔せず、うまくいかなかったときに後悔をするのではないでしょうか?

「幸せをあきらめなければよかった」に関しては、最後まで夢を追い続けることで対応できそうな気がします。死ぬ間際で後悔のない人などいないので、大いに後悔して死にましょう。

石蔵 文信 大阪大学招へい教授 循環器・心療内科医

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いしくら ふみのぶ / Fuminobu Ishikura

1955年京都生まれ。2013年4月~17年3月大阪樟蔭女子大学教授、17年4月~大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。2001年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。

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