がん患う医師「道半ばで死にたい」に隠された本音 死の直前まで熱中できるものを持っていたい

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道半ばで亡くなる――。必ずしも悪いことではないと著者は言います(写真:Graphs/PIXTA)
全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を2001年に開設、「夫源病」の名付け親としても知られる医師の石蔵文信さんは、64歳で前立腺がんが全身の骨に転移。現在も外来を行いながら、自身の治療を続けています。
延命治療や胃ろう、現役医師としての決断と、それをどう家族や周りに伝えるのか――。悔いのない最期のために、今から考えておきたいことをまとめた一冊『逝きかた上手』が発売、たちまち重版するなど話題を呼んでいます。現役医師が伝える終活の心得を、特別に一部公開いたします(3回にわたって紹介。今回は1回目)。

志半ばで他界し、自分の思いや事業を最後までやりきれなかった方が「不幸」だと表現されることがあります。本当にそうでしょうか?

志半ばで他界するのは不幸なのか

例えば、会社の重役となり、さまざまな改革を断行している人が突然、心筋梗塞や脳卒中で他界した場合、多くの方から惜しまれることでしょう。そういう場合は「志半ばで逝去した」というふうに表現されます。

確かに、本人にとってはもう少しいろいろなことをやりたかったと思いますが、ある程度の道筋をつけておけば、残された者が後を継いでくれるはずです。

さまざまなことに情熱を傾けている瞬間は、楽しいものです。私もプラモデルや鉄道レイアウトを作っているときが楽しく、できあがってみればそれなりにうれしいのですが、作っていたときの情熱はなくなっている──ということがあります。

組織にいる間に不幸にも他界したときは、その方の気持ちとは関係なく「志半ばで……」という言葉がよく使われます。逆に、退職などで組織から離れたあとは、「志半ばで他界する」とされる例は、あまり多くないように思います。

定年退職後は、仕事をしていても、多くの方は臨時雇用的な仕事になります。いろいろな趣味を楽しんでいて、その途中で亡くなっても「志半ばで他界する」とはあまり言われません。

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