がん患う医師「道半ばで死にたい」に隠された本音 死の直前まで熱中できるものを持っていたい

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生きているうちにその目標を達成したら、次の目標を作ればよいでしょう。残念ながら目標の途中に他界しても、それは何もすることがないよりは楽しい人生だったかもしれません。人生の後半で「志半ばで他界する」ことは、私は悪くない選択だと思います。

私が医師になったときは、がん患者さんのほとんどは病院で亡くなっていたと思います。体力が衰えてくるので点滴などの栄養補給が必要だったことと、痛みや呼吸困難で鎮痛剤・麻薬や酸素が必要だったことから、当時は自宅での療養は困難でした。

一昔前はがんの終末期にはかなり無理な治療をしていましたが、現在では麻薬や鎮痛剤などを使う緩和ケアが主流になってきています。30年ほど前から終末期の患者さんのケアをする、ホスピスや緩和ケア病棟を併設する病院も増えてきました。延命治療に重きを置かずに、安らかな「平穏死」を目指しています。

痛みと呼吸困難を和らげる治療がある

終末期に必要な治療は、栄養補給と痛みや呼吸困難の緩和でしょう。最近では開業医の先生のなかでも、緩和ケアができる人が増えてきました。また家庭用の酸素ボンベも手軽に使うことができます。

自宅で点滴などの栄養補給も可能ですが、これは医療関係者がかなり頻回にケアをする必要があります。また、がんの終末期に点滴やチューブで栄養補給をすると胸水や腹水が溜まり、それを抜く処置を週に1~2回しなくてはなりません。

ではいっそのこと、栄養補給を諦めてみてはどうでしょうか?

当然、食事も水分も受け付けなくなったら、1週間ももたないと思います。しかし栄養補給をせずに看取ってきた先生方の話を聞いてみると、意外に穏やかな死を迎えることができるというのです。

がんの終末期には、痛みや呼吸困難などの苦しさが伴います。その辛さが長引くよりは、いっそのこと栄養補給を断念して、苦しむ時間が短い平穏死を選ぶことも1つの方法でしょう。

看取りや緩和ケアの先生にお願いをして週1~2度ぐらい診察をしていただければ、自宅で平穏な死を迎えることは可能でしょう。

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私も自宅での看取りを強く希望しています。一番大きな理由は、病院のベッドにずっといることが退屈すぎるということです。慣れた自宅なら好きな時間にテレビをつけたり、本を読んだり、好きな物を食べることができます。

最後の1週間ぐらいは病院のベッドでも自宅のベッドでもあまり変わらないとは思いますが、それまでは自宅のほうがのびのびと療養できると思います。

また、看取る家族にとっても病院で長い時間ハラハラ待つよりは、自宅で時々顔を出すほうがよっぽど楽でしょう。多くの患者さんは「がんの終末期は病院でないとケアが難しい」と考えておられるかもしれませんが、栄養補給などをしないという決断さえすれば、自宅で平穏な最期を迎えることは十分可能だと思います。

石蔵 文信 大阪大学招へい教授 循環器・心療内科医

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いしくら ふみのぶ / Fuminobu Ishikura

1955年京都生まれ。2013年4月~17年3月大阪樟蔭女子大学教授、17年4月~大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。2001年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。

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