仮病じゃない!理解されない「気象病」の真犯人 梅雨時は頭痛薬が売れる、「五苓散」も効果あり
先のアンケート調査でも、「雨が降りそうなとき」は気象病が起こりやすいタイミングの第1位で、58.4%だった。以下、「雨が降っているとき」46.0%、「台風が近いとき」35.7%、「湿度が高いとき」26.9%、「曇っているとき」23.5%、「寒いとき」20.5%と続く(複数回答)。
症状としては、「頭痛・頭重感」との回答が最多で、77.6%に上った(複数回答)。英国NHS(国民保健サービス)も、頭痛の10大要因の1つに「悪天候」を挙げている。
「頭痛薬」の売上と「低気圧」の関係
なぜ、雨が近づくと頭が痛くなったり、重たく感じたりするのだろうか?
これまでさまざまな仮説が示されてきた。天気に関連する主な要素は、気圧、気温、湿度、日差しの4つだが、中でも「低気圧のせい」というのはよく聞かれる。
実際、国内の市販頭痛薬(市販名ロキソニン)数十万錠分の売上動向を調べた2014年の研究では、購入日の前日から降水量、平均湿度、最低湿度が高くなる傾向が見られた。特に、平均気圧が下がると売上が上がっていた。ほとんどの購入者は、頭痛を理由に発症後に購入していた。
たしかに今の時期だと、豪雨の原因となる小さな低気圧が梅雨前線の上に発達する。熱帯低気圧である台風が近づいてきた時も、気象病を訴える患者さんが増える。
ただし詳細なメカニズムは長年不明で、“それらしい”臆測も数多く出回ってきた。
例えば、「低気圧で体液や関節包が膨張し、周囲の血管や神経を圧迫して痛み等が出る」といったものだ。だが、血管や関節などは筋肉や周りの組織にぴっちり囲まれていて、日常の気圧変化程度で、それほど自由に膨張するものではないだろう。
これまでの気圧と頭痛の関連についての研究を網羅的に調べた論文でも、仮説として、三叉神経(顔の感覚を伝える神経)の興奮や、血管の収縮・拡張、気圧外傷(急激な気圧変化による耳内部の障害や痛み)などの要因が示されている。
現在有力な考え方は、「内耳にある気圧センサーが急激な気圧変化で刺激され、交感神経を興奮させて、頭痛その他の症状が起きる」というものだ。
名古屋大学と愛知医科大学は2015~2018年、天気痛を持病とする患者さん53人に対し、特殊な部屋の中で気圧を下げ、身体の変化を見る実験を行っている。気圧を40hPa下げたところ、痛みの増強と交感神経の興奮、鼓膜の温度上昇が起きた。
天気痛のない人で同じ実験を行っても、鼓膜の温度などに変化はなかったという。
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