アマゾンの謎の社内資格「バーレイザー」の秘密 昇進も昇給もないけど最も尊敬される称号

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バーレイザー・トレーニングに入ると、すでにバーレイザーとなった人がトレーナーとなり、候補者をトレーニーとして、3~4カ月くらいかけて教育します。

主な教育のやり方は、シャドーイングといって一緒に面接に入ってバーレイザーの面接を見学すること。トレーナーがバーレイザーとしてどういう質問をして、どのように候補者の方から言葉を引き出しているかをまず見るのです。その後、トレーナーがどんなフィードバックを書いたのか、バーレイザーとしてどういう行動をすべきなのかを、シャドーイングを通じて確認していきます。

ある程度、シャドーイングを重ねると、トレーニーも面接で質問をするようになります。そしてトレーニングの終盤では、トレーニーの人が主に質問をして、トレーナーは後ろで見守るようになります。

このトレーニングが終わった段階で、トレーナーが合格の判断を下すと、再びコミッティーでその結果を見て、OKであればバーレイザーの称号が授与されることになります。

辞令も昇級もないけど尊敬される称号

バーレイザーになったからと言って、特に辞令などは出ません。アマゾンのイントラネット上には「フォンツール」という社員名簿のようなものがあって、そこには顔写真や各種の情報とともに、社内表彰を受けたことをあらわすアイコンが付いています。その中に走り高跳びのアイコンがあれば、それがバーレイザーの印です。

バーレイザーは名誉職なので、バーレイザーになったらバーレイザー手当が出る、といったことはありません。ただしバーレイザーを務めると採用活動に貢献しますから、それがよい評価につながり、昇進や昇給に影響することは十分あります。

バーレイザーになっても手当があるわけではないし、むしろ面接に呼ばれるシーンが増えるわけなので、業務的には大変になります。でも、それらに勝る名誉があります。

おそらくバーレイザーは、アマゾンの中で最もみんなに尊敬される称号でしょう。

佐藤 将之 エバーグローイングパートナーズ代表取締役/事業成長支援アドバイザー

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さとう まさゆき / Masayuki Sato

セガ・エンタープライゼスを経て、アマゾンジャパンの立ち上げメンバーとして2000年7月に入社。サプライチェーン、書籍仕入れ部門を経て、2005年よりオペレーション部門にてディレクターとして国内最大級の物流ネットワークの発展に寄与。2016年、同社退社。現在は鮨職人として日本の食文化の発展に携わるとともに、成長企業での15年超の経験を生かし、経営コンサルタントとして企業の成長支援を中心に活動中。著書に『アマゾンのすごいルール』『アマゾンのすごい問題解決』(宝島社)、アマゾンのスピード仕事術」(KADOKAWA)、などがある。

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