日本に「航空宇宙自衛隊」が本気で必要になる理由 ウクライナ戦争、中国の宇宙進出から読み解く

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宇宙での抑止をどうするのか。宇宙での共同対処をどうするのか。このような事態に対してはどういう対応を取るのか。宇宙作戦とはどのような形になるのか。日本はこれからこうした点を議論していかなくてはいけない。これは宇宙空間での国家戦略を考えていくうえでは、避けて通れない。

防衛省は2026年度にSSA (宇宙状況監視)衛星を打ち上げる予定だ。この衛星は単に見ているだけではなく、不審な衛星がないかどうか探しながら近づいて動いていく。つまり、オペレーション(運用)が始まる。オペレーションが始まるまでには、宇宙の作戦はこうです、宇宙での自衛権はこうしますといった点を詰めていかないといけない。

宇宙開発における中国の勢い

――中国が宇宙空間で存在感を示しています。今月5日には中国独自の宇宙ステーションの建設にたずさわる宇宙飛行士3人を乗せた宇宙船の打ち上げに成功しました。あれを見せられると、日本はしょんぼりとしてしまうのですが。

中国はすごい勢いだ。2035年までに月面に研究施設を作ると表明している。中国は宇宙については大きな計画通りに進めている。本当に実力を上げている。カウンタースペースという攻撃的な能力も高めている。ロシアに比べて、民生技術や商業宇宙の基盤がしっかりしているところが侮れない。

ロシアのウクライナ侵攻を受け、中国とロシアは宇宙に関してもますます接近している。このため、地球と月までの間の「シスルナ領域」や月面での活動が結構早くやってくるかもしれない。

この領域は軍事的にも非常に重要なエリアが存在するため、宇宙安全保障にとっても大事な空間だ。アメリカを中心にして、ファイブアイズや日本は協力していく必要がある。

まず宇宙空間や月面の監視をやらなくてはいけない。アメリカも、中国がシスルナ領域で何をしているのかという監視、シスルナパトロールをやっていくことが重要になっている。

――これから宇宙空間でも中露が連携して、宇宙空間でも新冷戦が始まると予想していますか。

昔はアメリカとロシアの2極構造だった。そこには暗黙の了解があり、互いの宇宙アセットに攻撃をすると、核戦争にエスカレートすると思われていた。これが、中国が入って多極構造になった。中国が宇宙戦力を強化して「宇宙強国」を目指し、アメリカの宇宙航空優勢を打破しようとしている。

軍事戦略的にアメリカが宇宙システムに依存しているため、中国はこれをアキレス腱と見なし、この脆弱性を突こうと、攻撃的な宇宙兵器の開発を進めている。これから長い眼で見れば、相手は中国となるだろう。

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