日本に「航空宇宙自衛隊」が本気で必要になる理由 ウクライナ戦争、中国の宇宙進出から読み解く
――北朝鮮が6月5日に短距離弾道ミサイル8発を日本海に向け、発射しました。小型衛星コンステレーションのネットワークシステムができたならば、極超音速ミサイルを含むミサイルの飽和攻撃に対し、はたして探知、追尾、迎撃ができるのでしょうか。
まったく迎撃できないという話ではない。ただし、1発だけ飛んでくるのと比べ、何十発も飛んでくる飽和攻撃となれば、それは迎撃できる確率は必ず落ちるだろう。極超音速ミサイルになれば、さらに落ちるだろう。
とはいえ、確率は落ちても、ミサイルが飛んでくるという警報を流す意味はある。なにか知らないうちに降って湧いたようにミサイルが飛んでくるのではなく、ここにミサイルが落ちますから退避してくださいと警報で知らせることには相当な意味がある。
弾道ミサイルは宇宙空間まで上がってくるのか
――元陸自総監の山下裕貴さんが文藝春秋2022年6月号で、「河野(防衛)大臣が(2020年6月に)イージス・アショアを断念した時、既にアメリカから新しい防空システムの情報が入っていました。宇宙空間に上がってきた弾道ミサイルに、人工衛星から発射した小さな弾丸を命中させて軌道を逸らせる構想です。この情報も河野大臣の判断に影響したようです」と述べています。
弾道ミサイルが宇宙空間まで上がってくれば、衛星を使って迎撃するという構想はある。パトリオット、THAAD(終末段階高高度地域防衛システム)ミサイル、イージス・アショアのSM-3(スタンダード・ミサイル3)に加え、衛星あるいは衛星のようなものから攻撃するという宇宙配備の迎撃構想だ。
――相当な技術が必要になりますね。
そうだ。ただ、これは宇宙空間に上がってきた場合だ。極超音速ミサイルといった低空軌道のミサイルは迎撃できない。衛星から攻撃するとしても、それを回避し、変則軌道で下に降りてくるミサイルには対応できない。なので、それをどうするのかというのが1つの大きなポイントになっている。
宇宙空間に飛んでくるものについては、レーザーで対処したり、あるいはミサイルを発射した直後はスピードも遅いので、その時に迎撃したりするなどいろいろなアイデアがある。
アメリカは国家防衛戦略や国防宇宙戦略に明確に書かれている通り、自国の宇宙アセットが攻撃を受けた場合、時と手段を選択して対処する方針だ。宇宙で攻撃されたことは宇宙で反撃するという比例的なものではなく、地上でも打撃する姿勢を見せている。
地上発射の衛星攻撃もあり、衛星から衛星への攻撃もある。
何を選択するかは政治の世界の話になる。日本には「宇宙基本計画」があり、宇宙政策は示されているが、宇宙戦略がない。国家安全保障戦略と同じような宇宙安全保障戦略や宇宙防衛戦略がない。
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