ジープのトラック想定の4倍!売れないはずが… オフロードピックアップが持っていた潜在需要

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しかし、それから数十年たち、自動車を筆頭とする工業製品は今、生産地がどこであろうとも、ほぼ同じ品質をキープできるようになっている。「中国で生産したi Phoneの品質に問題がないのに、アメリカで生産されるクルマがダメ」ということはありえない。

販売の現場となる「ディーラーへのテコ入れ」は、ジープが熱心に取り組んできた課題であった。ここにインポーターは、真摯に取り組んできた。

2016年より、コーポレートアイデンティティ(CI)を販社に導入し、販売店舗のデザインを統一。販売拠点数も2016年の全国69店舗から、2021年には80店舗を超え、2023年までに全国100店舗展開を目指している。

CI導入により店舗デザインが統一されている(写真:Stellantisジャパン)

さらに「SUVのルーツ」であり、「SUV専門」というジープブランドのユニークさをアピールし、「モノからコト」へと誘導する「Jeep Real」プロモーションも功を奏しているという。毎年、実施している「愛車の写真の募集」やオーナーの集うイベントの開催などにより、ジープのファンを着実に増やしてきたというのだ。

実用性や経済性とは無縁の市場もある

商品でいえば、右ハンドルや4ドアボディ、特別なボディカラーや装備を持つ限定車など、日本人の好みにマッチするクルマを用意してきたことも、販売数増に大きく貢献した。

また、イタリアで生産するコンパクトSUV「レネゲード」の日本導入からは、女性オーナーが目に見えて増えたともいう。販売面からも商品面からも、ファンの数と質を高めてきたのだ。

PHEVもラインナップする「レネゲード」(写真:Stellantisジャパン)

こうした細かな積み重ねが、最低ラインから14倍という驚異の成長を実現し、日本に市場などないはずの巨大ピックアップトラックの予想外の好調さを生み出した。

ちなみに、2021年度に日本国内でもっとも数多く売れたメルセデス・ベンツは「Gクラス」であった。「Gクラス」は、軍用車にルーツを持つ、メルセデス・ベンツきっての武骨なSUVである。もちろん、グラディエーターと同様に電動化などされていないし、燃費性能だって低い。ついでに価格も、非常に高い。それでも売れているのだ。

電動化がこれほど叫ばれている中、しかもハイブリッドが全盛の日本市場において、グラディエーターやGクラスのような、無骨でクラシカルな大型SUVが人気を集める。自動車ビジネスは、通り一辺倒ではなく、多彩で奥深いものがあるのだと思うばかりだ。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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