NASAも着手「UFO研究」にアメリカが真剣になる訳 国防総省に続く、NASAの取り組みの目的とは

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NASAは現在、太陽系や銀河系など地球外の生命を対象とする宇宙生物学の分野では本格的な研究プログラムを持っている。ただ、地球外文明が存在する可能性については、ほとんど何の研究も行っていない。

このように研究領域に空白が生じているのは、議会に長年懐疑的な風潮があったためだ。

NASAの小規模な地球外知的生命体探査(SETI)計画は1978年、納税者のカネを無駄遣いしているとみなされるプロジェクトに与えられる「ゴールデン・フリース賞」をウィスコンシン州選出のウィリアム・プロクシマイア上院議員から授与された。1992年にNASAは地球外文明が発する電波信号を探査する電波天文学プログラムを開始したが、同プログラムは翌年、議会によって中止に追い込まれている。

地球外知的生命体探査は復活するのか

以来、地球外文明の体系的な探査は、カリフォルニアのSETI協会やブレイクスルー・リッスンのものなど、民間資金によるものが主体となってきた。バークレーSETI研究センターでの取り組みも、ロシア生まれでアメリカに在住する富豪のテクノロジー投資家ユーリ・ミルナーが資金の出し手となっている。

ザブーケンは記者会見で、NASAの天文観測では技術文明の存在を示す「テクノシグニチャー」の特定を試みる研究も行われていると指摘した。テクノシグニチャーになりうるものとしては、遠く離れた惑星の大気汚染などがある。

「われわれの研究対象にも、意識的にこういった要素を組み入れている」とザブーケンは述べた。

しかし、SETI協会の天文学者セス・ショスタックは、1993年にプログラムが中止に追い込まれていることを考えると、NASAが再び地球外知的生命体探査に多額の資金を投じるとは思えないと言う。

「NASAはあのときから、地球外生命体探査には手を出していない。理由は単純で、集中砲火を浴びやすいプログラムに予算をつける余裕がないからだ」とショスタックは電子メールに記した。

(執筆:Kenneth Chang記者)
(C)2022 The New York Times

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