かくのごとく、えちぜん鉄道は地域の人々の足であるだけでなく、観光輸送としても大いに力を発揮している。お客のサポートから観光案内までを行うアテンダントの乗務も、えちぜん鉄道が先駆けだ。
もともとこのえちぜん鉄道の2路線は、京福電気鉄道の路線であった。現在の勝山永平寺線が本線格(越前本線といった)で、福井県内で電源開発を行っていた京都電燈によって1914年に開業。三国芦原線は京都電燈の経営参画のもとで三国芦原電鉄によって1928年に開業している。京福電鉄になったのは1942年以降のことだ。
以来、長らく京福電鉄によって運営されてきたが、2000年代のはじめに立て続けに事故を起こし、それがきっかけで運転を休止。廃止の可能性も浮上したが、第三セクターのえちぜん鉄道に継承されて復権。地域の利便性を高めて観光客も取り込むスタイルで、いわゆる“地域に愛されるローカル線”になって今に続いている。
市街地を走る路面電車の正体
福井駅からはえちぜん鉄道に加えてもう1つ、ローカル私鉄が走っている。福井駅・田原町駅―越前武生駅間を結んでいる福井鉄道福武線だ。2016年には田原町駅を介してえちぜん鉄道三国芦原線とも相互直通運転を行い、福井駅前にも道路の上を通って乗り入れており、いわゆる路面電車としての側面が強い。
ただし、路面電車なのは福井の市街地に限られる。市街地の南に鉄軌分界点があって、それより南の鯖江・武生側は専用軌道を走る鉄道線。北陸本線と同じく福井・鯖江・武生を結ぶ役割を持っている。
なお、越前武生駅は北陸新幹線に「越前たけふ」という新駅が開業することにあわせ、2023年春には「たけふ新」駅に改称する予定だ。
と、このように福井県の鉄道は、南北に貫く背骨の北陸本線を中心に、福井駅で四方にローカル線が分かれて地域輸送を担うという構造になっている。ほとんどそれがすべてといっていいほど明確に、福井駅は福井県内の鉄道の中心である。
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