今、為替を円安へと突き動かしているものは何か 15年前と同じ「円売り」だが背景はもっと深刻

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こうなると「日銀(円)だけがマイナス金利」という構図になる。これは円安バブルという言葉まで用いられた約15年前(2005~2007年)に近い相場環境である。

当時は「円だけがゼロ金利」という状況で円キャリー取引(円で調達しドルなどで運用する)が隆盛を極めた。そして、日本は巨額の貿易黒字を抱えており、円安がファンダメンタルズに反しているという部分もあった。

しかし、現在は巨額の貿易赤字に転じている。そのうえで「円だけがゼロ金利」どころか「円だけがマイナス金利」という地合いに陥れば円売りの正当性が一段と強まってしまうだろう。

ファンダメンタルズが「円売り」を正当化

要するに、今の円安はファンダメンタルズに沿った動きである点で圧倒的な正しさがある。日本国内では円安の良し悪しを議論する風潮がかまびすしいが、日本人がどう感じようと、肝心のファンダメンタルズが円売りを正当化しており、それを積極的に変えたいという雰囲気も政府・日銀からは出てこない。

原発再稼働もインバウンド解禁も外貨流出を食い止めるという観点からは直接的なアプローチになるはずだが、政府が積極的に手を付けようとする様子はない。参院選が終わったら、反対勢力を恐れなくなり、動き出してくれるのだろうか。

この状況が続くかぎり、基本的にはFRBの正常化プロセスがつまずくことでしか円安は止まりようがないだろう。ドットチャートでいえば、最短で2022年12月、順当に行ったら2023年3月だろうか。今の円売りペースを踏まえると、その時間軸はかなり長い。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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