世界を揺さぶる、原油大暴落の"犯人" 米国シェール革命にも大打撃

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米国はロシアとウクライナ問題で対立。ほかにもイスラム国が拠点とするシリアに関して、米国が敵対するアサド政権をロシアは支援している。一方、米国とサウジはイランを敵視。イスラム教スンニ派のサウジとシーア派のイランは、中東での影響力を競い合っている。イランはロシアと同様に、シリアのアサド政権を支えている。つまり、米国・サウジ対ロシア・イランという対立構図だ。

原油価格が下がれば、産油国であるロシアやイランに大打撃を与えられる。同じ産油国である米国やサウジにとって諸刃の剣だが、サウジは7500億ドル(約88兆円)もの外貨準備高を保有しており、当面は耐えられる。米国は原油の生産だけでなく消費も多いため、原油安はエネルギー産業に限ればマイナスでも、経済全体では成長率を押し上げる、というわけだ。

20ドル台突入の可能性も

では、原油価格はどう動くのか。

「冬の需要期が過ぎることもあり、今年前半に30ドル台になる可能性はある」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之・上席エコノミスト)との見方が多い。瞬間的には20ドル台に突入すると見るエコノミストもいる。

価格底入れのカギを握るのは、米国のシェールオイルの減産だ。すでに掘削に必要なリグと呼ばれる設備の稼働数は足元で減少に転じているものの、実際にどのタイミングで生産量が減少し、どの程度減るのかは見えない。

原油価格が底を打った場合でも、どこまで価格が戻るのかがまた不透明だ。供給が減っても需要が弱い中で大きな回復を見込みにくい、との見方から50~60ドル前後と見る向きが多いが、イスラム国をはじめとして、地政学リスクが高まれば一気に暴騰する可能性もある。

原油輸入国の日本にとって、経済全体で見れば大きなメリット。ただ、冒頭のような商社や元売りにとってはマイナスの影響が大きい。掘削を手掛ける日本海洋掘削や浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)の三井海洋開発、油井管を製造する新日鉄住金など関連企業への波及も懸念される。また原油相場は世界経済をかく乱する要因となり、日本経済もあおりを食う可能性がある。

中島 順一郎 東洋経済 記者

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なかしま じゅんいちろう / Junichiro Nakashima

1981年鹿児島県生まれ。2005年、早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、東洋経済新報社入社。ガラス・セメント、エレクトロニクス、放送などの業界を担当。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などを経て、2020年10月より『東洋経済オンライン』編集部に所属

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