学校教師も銃を持て?アメリカの厄介すぎる論争 銃規制進んだイギリス、オーストラリアとの差

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

NRAは1871年に結成された全米最大の銃所持者たちによる団体だ。南北戦争で勝利した北部出身者を中心に設立され、1960年代からはロビー活動を中心に法人会員から多額の資金を得て急激に組織を拡大した。1998年から2003年までは、ハリウッド・スターのチャールトン・ヘストン(2008年に死去)が会長を務め、メディアを利用して支持を拡大。共和党右派とのつながりを深めていったという。

NRAが銃規制に反対する理由は「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利はこれを侵してはならない」という合衆国憲法修正第2条の存在が大きい。そのため、個人が武器を保有する権利を規制することは憲法違反であるという立場をとっている。

学校での銃撃事件については、一般の生徒が銃を持っていたことが犯人の足止めとなって、さらなる犠牲者が出るのを防いだ事例がある。1997年に起こったミシシッピー州のパール高校での銃乱射事件の際、教頭が自分の車から銃を取り出し、車で逃走する犯人を足止めした例もあり、それらをもってNRAは「殺すのは銃でなく、人だ」という主張を繰り返しているのだ。

テキサス州では銃を購入できる年齢はライフルが18歳、拳銃が21歳。18歳になれば親の同意なしで、合法的にライフル銃を購入できるのだ。今回の事件の犯人は5月16日に18歳の誕生日を迎えたばかりだった。

「実はバイデンが大統領に就任してすぐの2021年3月、下院では銃規制に関する法案が可決されたのですが、上院では可決に必要な60票を取れませんでした。現状は保守派とリベラル派は50対50なのですが、そのリベラル派の50人のうちの2人が保守寄りで、銃規制反対側に回ったのです。

バイデン大統領は今回の事件を契機に、世論を巻き込んで銃規制を推進させようとしていますが、共和党の反対が強いため妥協案を出して承認させるしか方法はないようです」(現地ジャーナリスト)

11月の中間選挙では、今回の事件が起こったテキサス州の州知事選挙も行われる。現知事の共和党のグレッグ・アボット氏に対し、民主党の州知事候補であるベド・オルーク氏は、「銃に対処せずして銃暴力に対処することはできない」と、銃暴力への対処方法を提示し、当選したら共和党議員と協力して共通の合意事項を確立すると述べた。一方のアボット知事は、基本的に銃規制には否定的で、代わりに事件の加害者になりうる心の問題を抱えている人のメンタルヘルスに取り組むことの重要性を主張している。

「事件後に犯人が通っていたウバルク高校でアボット知事の記者会見があったのですが、その会場に民主党のオルーク氏が乗り込み、会見の途中で壇上のアボット知事に向かって『何もやってないじゃないか』と糾弾し、警察から会場を追い出される出来事がありました。中間選挙に向けて両者の戦いはすでにヒートアップしています」(現地ジャーナリスト)

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事