学校教師も銃を持て?アメリカの厄介すぎる論争 銃規制進んだイギリス、オーストラリアとの差

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連邦法ではライフルは18歳以上、拳銃は21歳以上から購入ができるが、州によって所持の条件などは異なる。銃規制推進派の主張は、飲酒や喫煙は21歳からなのに、なぜ18歳でライフル銃を合法に購入することができるのか、年齢を引き上げるべきだと主張。一方の銃規制反対派は18歳で選挙権があり、軍隊にも入隊できるのになぜ銃を所有する権利だけが違う扱いを受けなければならないのかと反論。両者の主張は平行線のままだ。

スイスのジュネーブにある国際開発研究大学院の研究プロジェクト「Small Arms Survey」の2018年のデータをみると、アメリカの銃保有率は飛び抜けているのがわかる。

「国民100人あたり120.5丁ということは、国民1人が最低でも銃器1丁を保有しているということになり、アメリカには約3億9000万丁の銃が流通していると推定される。2011年のデータでは88丁だったのだが、数年で大幅に増加しているのだ。参考までに日本は100人あたり0.3丁となっている。

今年2月に発表された医学学術雑誌「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」によると、コロナ禍の2019年1月から2021年4月の約2年の間に、750万人のアメリカの成人が新しく銃を手に入れたという報告もある。

2020年に起こったアメリカでの殺人事件の79%が銃器によるものだ(※アメリカ疾病予防管理センターの発表)。これだけの事実を突き付けられても、銃規制が一向に進まないのがアメリカの現状である。

イギリスとオーストラリアはなぜ銃規制に進めたか

一方、銃規制に進んできた国もある。イギリスとオーストラリアだ。銃規制の背景には、契機となった銃乱射事件がある。

イギリスでは1987年に27歳の男性がライフル、拳銃、防弾チョッキで重装備をして自分の母親と駆けつけた警官を含めた16人を次々と撃ち殺し、15人に重軽傷を負わせた「ハンガーフォード銃乱射事件」が発生。この事件をきっかけに禁止される武器の種類が増えた。

また、1996年にはスコットランドで43歳の男性が16人の生徒と1人の教師を射殺した「ダンブレーン小学校銃乱射事件」が起こった。イギリスにはNRAのような団体が存在しないこともあり、このイギリス史上最も致命的な事件によってさらに銃規制が強化された。

その結果2004年をピークに銃を使用した事件は減少しており、取り締まり強化の成果だと分析されている。

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