なぜウクライナだけ?放置される「難民申請者」 「扱いの違い」に愕然とする支援者の声
前出のNPO法人、AMIGOSの長澤氏が支援する外国人の多くは、経済難から医療機関を受診できず病状が悪化した仮放免者たちだ。
AMIGOSが2021年10月から3カ月間にわたって行った仮放免者の生活実態調査によると、回答数140件のうち84%が経済的理由により医療機関を受診できないことがあると答えた。また79%は、経済的余裕があれば治療したい病気やケガがあると回答した。
「難民申請中に在留資格を失い、退去強制処分を受けて仮放免になった場合、公的支援が何もない。本来公的機関が支援すべきところをわれわれのような民間支援が代替せざるを得ず、その負担は大きい」
これまで難民申請者らを支援してきた、原文次郎氏(一般社団法人反貧困ネットワーク・外国人支援担当理事)はそう話す。
仮放免者や、短期滞在者扱いの人は健康保険に加入できない。そのため自己負担となる医療費が、時に100万円単位の高額な負担になることがある。この治療費を当事者が払うことは不可能で、公的支援がない現状では支援者が払うことになり、過大な負担になる。
支援団体の活動費の原資は、助成金や寄付金などがメインだ。毎年の資金確保のためには助成金を得なければならないが、時には申請が認められない場合もある。仮に助成金が下りても、支援ができる人数は限られている。支援者の中には、糖尿病などの慢性疾患患者もおり、継続的に薬代がかかる。
コロナ禍で支援額は過去最高額に
さらに、コロナ禍で状況は悪化している。長澤氏によれば、「仮放免者を支援していた支援者が、コロナ禍で仕事が減るなどで困窮し、支援できなくなるケースが増えている」という。また、収容施設での新型コロナ流行などにより仮放免者が増えたこともあり、AMIGOSでの支援金は2021年、1200万円と過去最高額に上った。
光熱費や家賃などを含めると、2021年の支援額は合計で4800万円だった。ただ、コロナ禍で支援者からの寄付金が減ったことで、今年は74世帯分の光熱費が支援できない状況にあり、カンパなどを募る予定だ。長澤氏は「生活保護と同等の支援をしているにも関わらず、国からは何の支援もない」と憤る。
このような苦労を重ねる中で、政府はウクライナ避難民に対し、迅速な支援姿勢を見せた。「これまでのアフガニスタンや、シリアでの状況と比べても、あまりの扱いの違いに愕然としている。国籍にかかわらず同等に扱うべきだ」(原氏)という思いがある。
「母国にいられない」という点では、ウクライナからの避難民と難民申請中で仮放免中の外国人の間に、大きな差は無い。ウクライナ避難民を受け入れる一方で他国出身の難民申請者を受け入れない状況は矛盾している。
迅速かつ柔軟な対応をウクライナ避難民の受け入れだけで終わらせず、日本に滞在する難民申請者の厳しい状況について議論がなされるべきだろう。
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